日本におけるラバーダム使用率はわずか5.4パーセント
歯の治療するときも同じです。船上に入り込む海水とは、口の中の唾液です。唾液には、夥しい数の細菌が含まれます。唾液を防がない限り、患部に細菌が入ってきます。それを防ぐには治療箇所以外をラバーダムで覆い、患部に細菌が入らないようにするしかありません。
むし歯が再発してしまう少なくない原因のひとつは、ラバーダムを使わない治療によるものです。むし歯が再発したとき、同じ歯科医院に駆け込んだのでは、いずれまた再発します。あるいは別の歯科医院に行っても、日本の多くの歯科医院はラバーダムを使わないので、やはり同じ結果になります。日本でむし歯に苦しむ人は、こんなことを繰り返していて、この繰り返しが日本の常識になっているのです。
ラバーダム治療は、いまや世界の常識です。日本でも海外事情に詳しい歯医者や、問題意識の高い歯医者はラバーダム治療を行っています。しかしそのような歯医者は、ごくひと握りです。
2003年に行われた調査によると、日本の歯医者のラバーダム使用率は、わずか5.4パーセントでした。ラバーダムの誕生が19世紀半ばであることを考えると、恐ろしいほど低い数字です。
欧米先進国の使用率は70パーセント以上
また2019年10月から2020年11月にかけて、日本歯内療法学会が主催するワークショップやセミナー、インターネットを通じて、アンケート調査が実施されました。
最終的に986名から回答が得られ、そのうち463名が日本歯内療法学会の会員、100名が歯内療法専門医か学会指導医、残る523名が非会員でした。アンケートからわかったラバーダムの使用率は、以下のとおりでした。
● 日本歯内療法学会会員
51.5パーセント
● 歯内療法専門医グループ
60.0パーセント
● 非会員
14.1パーセント
日本歯内療法学会の会員や歯内療法の専門医といった、口腔医療に熱心な人たちでも半数ほど、そうでない人になると1割台でしかないのです。最も使用率の高い歯内療法専門医の60.0パーセントでさえ、世界と比べると低い数字です。
世界各国の歯内療法専門医のラバーダム使用率は、以下のようになっています。
ノルウェー……85パーセント
アメリカ……85パーセント
イギリス……72パーセント
ドイツ……75パーセント
マレーシア……85パーセント
シンガポール……75パーセント
韓国……60パーセント
中国……50パーセント
つまり、欧米先進国では少なくとも70パーセント以上、スウェーデンでは90パーセントの専門医がラバーダムを使用しているのです。東南アジアでも、マレーシアやシンガポールのような意識の高い国では、やはり高い使用率になっています。