日本の治療方法では、むし歯の再発リスクが高まる

ラバーダムは、1864年にアメリカの歯科医師によって考案されました。以後、ラバーダムの有用性が認められ、世界標準の治療法になっています。ところが、驚くことに日本では9割の歯医者がラバーダム治療を採用していません。そのため日本人の多くはラバーダム治療を体験したこともなければ、名前さえ知らないのではないでしょうか。

むし歯の治療で患部を削った場合、充填じゅうてん治療や補綴ほてつ治療を施します。充填治療は削った部分に詰め物を施す治療、補綴治療は削った部分にかぶせ物を施す治療です。

インプラント治療に比べ、詰め物やかぶせ物をするだけの簡単な治療と思われがちですが、これらの治療も本来はラバーダムを使用すべき治療です。詰め物であれかぶせ物であれ、ラバーダムを使用しなければ、やはり詰め物やかぶせ物をした箇所に細菌が入りやすくなります。その結果、治したつもりのむし歯が再発するといったことにもなるのです。

「やはり一度むし歯になった歯は、またむし歯になりやすいのだな」などと納得してはいけません。ラバーダムを使えば、再発するリスクは減らせるのです。逆にいえば世界では、一度治したむし歯が再び痛むことは、そうそうありません。むし歯を機に歯のメンテナンスをしっかり行うようになれば、なおさらです。

ところがラバーダムを用いない日本の治療では、その後メンテナンスをしっかり行っていても、以前の治療で入り込んだ細菌により、再発することにもなるのです。

あまりの激痛に眠れなくなる人も

ラバーダムを使わなかったために起こる歯の病気もあります。典型が、根尖こんせん性歯周炎です。歯の根元が、細菌により炎症を起こすというものです。

歯の痛み
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たとえば、むし歯で歯の神経を抜くとき、歯の中に細菌が入ってしまった。これが炎症を起こすのです。本来、歯の中にバイキンはいません。ラバーダムをしないことで病気が起こるわけです。

炎症が慢性化しているときは痛みを感じませんが、急性化すると激痛に襲われます。私の患者さんの中には、「あまりの痛みに3日間眠れなかった」と訴える人もいました。あるいは顔面がれ上がり、顔の形が変わるほどだった人もいました。いずれも以前通っていた歯科医院で、むし歯治療の際にラバーダム治療を行っていませんでした。

ラバーダム治療の重要さを説明するとき、私がよくたとえるのが船底にあいた穴です。船の上で作業中、船底に穴があいたときです。底から船上におびただしい量の海水が入り込んできます。慌てて海水をかき出したところで、船底の穴を塞ふさがない限り、海水はいくらでも入ってきます。いずれは甲板かんぱんにまで海水が浸入し、船は沈没してしまいます。

大事なのは、まず穴を塞ぐことで、海水をかき出すのは、その後の作業です。