子どもを無菌状態のまま育てるのは不可能

【カン違い】
子どもにむし歯菌がうつるからスプーンの共有はNG

どんなに注意しても、口内のむし歯菌はゼロにできない

赤ちゃんができると、親はつい神経質になりがちです。口腔ケアでは、わが子をむし歯にしたくないからと、子どもとスプーンを共有しない人も少なくありません。スプーンを共有することで、親のむし歯菌が赤ちゃんにうつり、赤ちゃんがむし歯になってしまうのを防ぐためです。

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なかでも2歳半までは「感染の窓」と呼ばれ、この時期に外から入ってきたむし歯菌が口の中で定着しやすいといわれます。生まれたときの赤ちゃんの口の中には、むし歯菌がいません。それが外部から入ってくることで、むし歯菌が定着し、場合によってはむし歯になるというわけです。

むし歯菌を持ち込むのは多くは親で、そこから赤ちゃんにキスをするのもダメという人もいます。確かに理屈上はそうですが、実際はそこまで神経質になる必要はありません。親がどれだけ気をつけようと、子どもを無菌状態のまま育てるのは不可能だからです。

むし歯菌にしても、どこかの段階で必ず入ってきます。そう考えれば、親と子どもが使うスプーンを別々にしたり、かわいい我が子へのキスを我慢する必要はありません。親子のスキンシップを大事にしたほうが、子どもの成長にはより有用ではないでしょうか。

歯周病菌がきっかけで浮気が発覚したケースも

そもそも、むし歯菌があるからといって、必ずむし歯になるわけではありません。これまで述べてきたように、口腔ケアをきちんとしていれば、むし歯にはなりません。

親として気をつけるとしたら、自分自身にむし歯があったら、これを治すことです。さらには定期検診をきちんと行うことです。親がむし歯だったり口腔ケアがおろそかだったり食生活が乱れていれば、子どもも同じように成長する可能性が高いからです。

ちなみに人からむし歯菌をうつされるのは、子どものときだけではありません。キスによって夫が妻に歯周病菌をうつしたり、妻が夫にむし歯菌をうつすこともあります。歯周病菌やむし歯菌は一種類ではなく、いくつもの種類があります。夫婦間で菌をうつしあっているので、夫婦の口の中の菌は同じタイプになります。

ただし、どちらかが浮気をすれば、別の異性の菌が口の中に入ってきます。なかには夫婦の口の中の菌を調べたところ、別の歯周病菌が発見されて浮気が発覚したという笑い話もあるほどです。

さらにいえば、犬からも感染します。イエテボリ大学の口腔細菌学主任教授グンナーダレン(Gunnar Dahrén)教授から、ある子どもが悪性の歯周病にかかった話を聞いたことがあります。

歯周病菌の中でもとくに悪質な、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス菌と呼ばれる菌がいます。この菌に侵されると、若くても悪性の歯周病にかかります。昔は若年性歯周病と呼ばれていましたが、いまは侵襲しんしゅう性歯周炎と呼ばれています。