本来、親子は親権に関係なく、お互いに会う権利を持っている。ところが民法で親権として認められているのは「身上監護権」(民法第820条)と「財産管理権」(民法第824条)であり、最近まで子どもと面会交流する権利については具体的な規定がなかった。そのせいか、現実には親権を失った親が面会交流を厳しく制限されることがまかり通っている。妻や夫がなりふり構わない手段に出るのは、こうした仕組みの犠牲になりたくないという思いがあるからだ。
欧米では離婚後も父親と母親の両方が親権を持つ共同親権制度を採用しているところが多く、監護親でなくても年間100日程度の面会交流が標準プランになっている。隔週で2泊3日、夏休みなどの長期休暇の半分を非監護親のもとで過ごすと、およそ100日だ。一方、日本の面会交流の相場はわずか月1回。臨床心理や児童心理の専門家からは、面会交流が少ないと子どもの精神状態が不安定になるという意見も出ているが、日本の裁判所は頑なに相場を守っている。
じつは12年の法改正で、面会交流については進歩があった。協議離婚するときは、子どもの利益を最優先に考えて、面会交流についても協議をすることが定められたのだ(民法第766条)。ただ、前途は険しい。
「法改正を受けて、裁判所が月2回の面会交流を認めるケースも表れ始めました。しかし実際は二極化していて、4カ月に1回、半年に1回という審判も珍しくない。なかには『面会は不可。年2回のビデオレターのみ』という審判のケースもあります」(小嶋弁護士)
こうした現状が放置されているかぎり、DV法や、うつ病診断の悪用はなくならないだろう。早急な改善が望まれる。