「政権に居座ることは許されない」
読売新聞、朝日、産経3紙の社説は、短兵急に石破首相の退陣を求めた。読売新聞は10月29日社説で「政権に居座り、政局の混乱を長引かせることは許されない。速やかに進退を決することが憲政の常道である」と指摘したうえ、11月2日には「まず選挙で敗れた首相が責任を取って身を処し、後継の自民党総裁の下で、新たな連立の枠組みを模索するのが筋だろう」と踏み込んだ。
産経新聞は10月29日社説で「石破首相が今、日本と国民、党のためにできることは速やかに辞任することしかない」と主張したほか、11月4日には櫻井よしこ氏の「首相即時退陣こそ国益」と題したコラムを1面に掲載した。その後も産経は11月9日の社説などで石破首相の「居座り」を厳しく批判している。
朝日新聞は10月28日社説で、自公で過半数という「自ら設定した最低限の目標を達成できなかった以上、石破首相は職を辞すのが筋だ」と書き、首相責任論の口火を切ったのだが、石破首相の続投を前提に自民、公明、国民民主の3党協議が始まったことを受け、11月2日社説で「課題ごとに与野党が熟議を重ね、多数の賛同を得て政策の実現をめざしていくのであれば、望ましい動き」と認め、首相批判を和らげたように見える。
石破首相辞任は必要ないが65.7%
世論はこうした新聞論調とはやや異なる反応を見せた。10月30日の読売新聞世論調査(28~29日)では、衆院選の結果を受け、石破首相は辞任するべきだと思うかについて「思わない」が56%、「思う」が29%だった。石破内閣の支持率が34%で、内閣発足時の前回調査(1~2日)の51%から急落し、不支持が支持を上回ったにもかかわらずである。
共同通信世論調査(10月28~29日)でも、内閣支持率が32.1%、不支持率は52.2%だったが、首相が辞任すべきだは28.6%にとどまり、辞任は必要ないが65.7%に上った。石破内閣の不支持率が高いのに、首相の続投を望む声が多いという「矛盾」した結果となった。
今回の衆院選で、有権者は政治とカネの問題で、自民党にお灸を据えたが、その大幅な議席減の責任は石破首相だけにあるのではない、という判断なのだろう。
自民党は11月7日、衆院選を総括するための両院議員懇談会を党本部で3時間にわたって開き、党執行部への批判が相次ぐ中、事実上、石破首相の続投を容認した。
冒頭、首相は「選挙結果を厳粛、謙虚に受け止めなければならない。多くの同志を失い、痛恨の極みだ」と述べ、頭を下げた。続いて森山裕幹事長が「良い結果を出せず、強く責任を感じている」と陳謝した。