「党の体制の刷新をしないと戦えない」

報道によると、その後、懇談会は非公開となり、出席者200人弱のうち50人程度が発言したという。来年夏の参院選で改選を迎える西田昌司参院議員(旧安倍派)は「与党として補正予算、予算の編成をやらなければならないが、参院選に向けて党の体制の刷新をしないと戦えない」と述べ、執行部を追及した。

敗因の検証を求める声のほか、落選者の意見を聞くべきだとの声も小林鷹之元経済安全保障相(旧二階派)らから上がった。青山繁晴参院議員(無派閥)が「首相は来年度予算の編成前に潔く辞意を表明するべきだ」と早期退陣を求めたが、同調者はいなかったという。

最も不満が集中したのは、選挙戦終盤に非公認候補の党支部に公認候補と同額の2000万円が支給された問題だった。これが明るみに出たことで大敗が決定的になったとし、柴山昌彦元文部科学相(旧安倍派)は「次の参院選に負けたら自民党に未来はない。2000万円の非公認者への振り込みについて検証をしっかり行うべきだ」と執行部に要求した。

これについては、森山氏が「政党交付金は年4回と選挙時に交付するというルールに基づいて交付した。非公認の人の選挙費用に使えるような仕組みにはなっていない。そこはしっかり説明をし切らなかった我々の反省だ」などと説明し、事態を収めたという。

首相指名選挙を4日後に控え、党内のガス抜きを図った党執行部の狙い通りだった。

総裁選の決選投票で敗れた高市早苗元経済安全保障相は、人間ドック受診を理由に懇談会を欠席したが、その日にX(旧ツイッター)に投稿し、「自民党が分裂していたら、立憲民主党を中心とする内閣が出来るだけだ」などと党内の結束を求めている。

当面は「石破降ろし」の動きは党内にうかがえず、高揚感なき低位安定の政権運営が続く。だが、内閣支持率が低迷したまま、来年夏の東京都議選、参院選を迎えるとなると、4月ごろの予算成立をメドに首相交代論が党内から噴出する可能性は小さくない。

「野党の思いを誠実に謙虚に承る」

石破首相は特別国会召集日の11月11日、国民民主党の玉木代表、立憲民主党の野田代表と国会内で個別に会談し、「野党の思いを誠実に謙虚に承り、国民に見える形であらゆる決定をしていきたい」と述べ、少数与党政権として、両野党の主張や見解を取り入れて行くという「低」姿勢を示した。

玉木氏は、衆院選で訴えた、年収103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の解消を主張し、原則一律に適用される減税措置の基礎控除などを拡大して178万円まで引き上げるよう要求した。ガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除を含む減税も改めて求めた。今後、政府・与党と国民民主党との協議に委ねられるが、石破首相にとって、この折衝である程度譲らないと、政権の維持が危うくなるのが現状だ。