自公両党が連立を組んで25年経つが、初めての少数与党政権となる。これまで予算案や法案は自公両党の事前審査で了承すれば、国会で修正なしに成立したが、今後は野党との折衝を並行させながら成案をまとめざるを得ず、案件によっては自公の足並みがそろわないと、立民党や国民民主党に主導権を部分的に握られることもあり得る。岸田文雄政権では自公両党幹部間で意思疎通ができず、ギクシャクした関係になったが、今後は連携を一段と強める必要があるだろう。

国会運営では、17の常任委員長ポストは予算委員長を含めて7つを野党に割り振った。自民党は坂本哲志国会対策委員長が衆院前と同程度の委員長ポストを譲る案を示したが、立民党の笠浩史国対委員長が本会議での選挙を主張したことから、議席数に応じたドント式で配分することで合意した。自民党の正常性バイアス(危険で予期しない事態が発生しても日常の範囲内と判断し、対応しようとする人間心理)を物語るエピソードでもある。

与党にとって、衆院予算委員長を野党(立民党の安住淳前国対委員長)に割り当てると、従来のような委員長職権に基づく強引な委員会開催や議事整理、採決などはできなくなる。11月28日召集の臨時国会の補正予算案、来年の通常国会での25年度予算案審議は、石破首相にとって綱渡りどころか、閣僚らの不祥事やスキャンダルが発覚すれば、茨の道になるだろう。

秋の国会議事堂
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比較第1党に政権を担当する責任がある

自民党は、今回の衆院選で65議席減らしながら、191議席を得て比較第1党の座を守った。公明党と合わせても215議席で、非公認や無所属で戦った議員を会派に6人取り込んでも、過半数233議席には届かない。だが、比較第1党には政権を担当・維持する責任がある。第2党や第3党以下に連立や閣外協力、部分連合を働きかけることに、違和感はない。

過去の衆院選で自民党が過半数を獲得できず、比較第1党にもかかわらず、政権を維持できなかったのは、1993年の宮沢喜一首相しかいない。この時は非自民・非共産8党派の連立による細川護熙政権が生まれている。

立民党の野田代表は、衆院解散後の10月11日、時事通信などとのインタビューで「比較第1党を取れば、政権を取れるチャンスがある」「連立を組むのはどこなのか、閣外協力はどこがやってくれるのか、首相指名は応援してくれるのか、個別の政策協定となるのか。やってみないと分からない」と述べ、政権奪取を目指すとの見解を示していた。

その意味で、首相指名選挙で共産党が野田氏に投票したのは、いかがなものか。野田氏が勝っていたら、共産党は閣外協力するのか、部分連合なのか、どういう位置づけになるのか。野田氏に説明責任が生じるだろう。

自民党にとっては、比較第1党を維持した以上、石破首相に政権を続ける責任があるということだろう。永田町の「常識」でもある。