ピークは2000年代、コロナ禍を過ぎても業績は上向かなかった
そんな中、業界のトップ企業へ成長したのがライトオンでありマックハウスでした。両社ともに2000年代半ば頃に業績のピークを迎えます。ライトオンは2007年8月期には売上高1066億円、営業利益58億円をたたき出しましたが、これ以降業績は下がり続け、24年8月期には売上高338億円、営業損失50億円で6期連続の赤字と低迷しました。ピーク時から74%減の数字であり、ついに金融機関からも自力再建は不可能であると通達され、ワールド傘下入りとなりました。
マックハウスも2008年2月期には573億円の売上高がありましたが、2024年2月期は売上高154億円、営業損失は9億1000万円でこちらも6期連続の赤字でした。マックハウスは2008年度比で72%減収となります。
2020年春の新型コロナ感染症の拡大によって業績の悪化に拍車がかかったことは否めませんが、問題は23年5月以降にコロナ自粛が全面解禁となり、他の大手衣料品販売店が業績を回復させ、2024年度決算は軒並み好転しているのに対して、ライトオンとマックハウスは減収赤字を続けている点です。低迷の原因は新型コロナ自粛ではないことはあまりにも明白です。
カジュアル服といえば「ジーンズカジュアル専門店」だった
では、何が原因なのでしょうか。
要因の一つは、かつて広くマス層から支持されて隆盛を誇ったジーンズカジュアル専門店という小売店形態が、マス層からの支持を失ったとことだと筆者は考えます。
私は今年54歳になりましたが、この世代の人が若い頃は、ジーンズカジュアル専門店くらいしかカジュアル服を買う店が存在しませんでした。私が大学生だった三十数年前は、よほどのブランド好きな人以外は、日常的なカジュアル着はジーンズカジュアル専門店で買っていました。
特にリーバイスやエドウイン、ボブソン、ラングラーなどのいわゆるナショナルブランドのジーンズを買う場としてはジーンズカジュアル専門店が圧倒的でした。ライトオン、マックハウスだけではなく、各地に存在していたジーンズカジュアル専門店がその対象でした。
20歳ぐらいのとき、大学の同級生の男性から「洋服を買いに行きたいのでついてきてほしい」と言われました。当時の私は洋服に興味がなかったので「おかしなことを頼む奴だなあ」と思いつつも、暇だったので同行しました。彼が連れて行った先は、大阪・梅田にあった当時の超人気ジーンズカジュアル専門店「ジョイント」でした。
彼は3枚か4枚ほどカジュアル服を買っていたと記憶しています。私も単なる付き添いでは時間の無駄だと思ったので、1900円くらいの長袖Tシャツを1枚だけ買った記憶があります。ただ、当日は日曜日だったということもあり、梅田の中心地にあったジョイントの店内は大盛況でめちゃくちゃ混雑していました。それほどの人気だったのです。
こうした状況はジョイントだけに限りません。私の実家の周辺にも「三信衣料」とか「フロムUSA」といったジーンズカジュアル専門店チェーンが複数存在しており、年頃を迎えた中学生たちの多くが洋服を買っていました。