もし、近隣の京セラドームを借りるとしたら…

ドーム球場での開催も現実的には難しいだろう。一番の理由は、甲子園の球場使用料が無料だからだ。1915(大正4)年に阪急電鉄が所有する豊中グラウンド(現大阪府豊中市)で産声を上げた中等学校の全国大会は、1917(大正6)年の第3回大会から、阪神電鉄が鳴尾競馬場の馬場内に開場した鳴尾球場(現兵庫県西宮市)へと移った。

ただ、野球人気が上がるにつれ、観客数増加への対応に追われた。阪神電鉄は、主催者の大阪朝日新聞社からの本格的な野球場建設を打診されたこともあり、1924(大正13)年の第10回大会に合わせ、わずか4カ月半という短期間で甲子園を完成させたのである。

このような経緯に加え、阪神電鉄も電車運賃と沿線開発によって収益を上げられたこともあり、今でも春夏の大会開催時は、グラウンド整備費用等こそ請求するが、球場の使用料そのものは請求しないままとなっている。

もし、ドーム球場に場所を移すとなると、負担額はいくらになるのだろうか。

京セラドーム大阪(大阪府大阪市)の場合、公式サイトに掲載されている会場使用料(税別)は、基本料金(8時間)が平日300万円(延長料金=1時間20万円)、土日祝日が400万円(延長料金=1時間30万円)となる。

「非商業性」を貫くがゆえの苦しい懐事情

各校3日間の練習日も含め、計17日間球場を使用した今夏大会に当てはめてみれば、平日11日間、土日祝日は6日間借りることになり、会場使用料だけで5700万円かかることになる。1日4試合となると、設営撤去の時間を含め8時間で終わることはなく、延長料金が上乗せされる。

スタンド席も1000席で10万円の費用が発生するため、仮に1日2万席を抑えれば200万円、14日間で2800万円がかかる。ドームビジョンや駐車場のオプション、消費税を加えれば、1大会で1億円はゆうに超えるだろう。

高野連は非商業性を貫くがゆえ、全試合放送するNHKや大阪朝日放送などからの放映権料はゼロ。春夏合わせ10億円ほどの入場料収益を軸にやりくりしなければならない。甲子園から使用料を請求されない限り、使い続けたいのが本音だ。

今夏大会の開会式。選手宣誓を行った智弁和歌山の辻旭陽あさひ主将は、「僕たちには夢があります」と切り出し、こう続けた。

「この先の100年も、ここ甲子園が、聖地であり続けること。そして、僕たち球児の憧れの地であり続けることです」

先人たちが守り、受け継いできた日本最古の球場が、100年先も変わらず球児たちの聖地であるために……。現状に満足することなく、さまざまな知恵を出し合いながら、必要な対策を講じていく必要がある。

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