「甲子園ドーム化構想」が浮上したことも

高野連や球場も段階を追って猛暑対策を進めてきた。2019(平成31、令和元)年にアルプス席や外野席にエアコン計28台、12カ所の入場門には各1台ずつ壁付型扇風機をそれぞれ増設。アルプス席の一部の床には遮熱塗装を施した。

2023(令和5)年からは5回終了時に10分間の休憩時間を設ける「クーリングタイム」、そして今年から、炎天下の時間帯を避けて午前と夕方の3試合に分ける「2部制」を開幕から3日間の日程で導入。銀傘の拡張を前に、新たな100年へ向けて議論を重ね、行動に移してきた。

長い歴史の中で、ドーム化が検討されたこともある。1990年代、甲子園に隣接していた「甲子園阪神パーク」(2003年、平成15年閉園)が赤字続きで閉園が検討される中、その跡地と周辺地を加えた用地にドーム球場を建設するという計画が浮上した。

実際に1993(平成5)年には「(同年秋に開始する)西梅田再開発事業が終了する10年後を目処にドーム球場の建設を始めることを検討している」という報道もされたほどだ。

しかし、1995(平成5)年に起こった阪神・淡路大震災や、バブル崩壊の余波などの影響から、ドーム建設事業は正式発表されることはなかった。当時は今のように暑さも厳しくなく、莫大な建て替え費用がかかることも白紙撤回の一因となった。

「ナイター開催」は公平ではない

甲子園はその後、球場本体の構造強度の検査結果を踏まえ、基礎部分のみを残して大改修を終えた。もしこの時にドーム化されていれば、少なくとも酷暑の問題はクリアできていたのかもしれない。

2009年夏の甲子園決勝
2009年夏の甲子園決勝(写真=百楽兎/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

それでは、開催時期をずらしたり、2部制4試合にしたり、他ドームでの開催はできないのだろうか。

まず、前提として、高校生の本分は学業だということ。長期的に学校を休める時期は、シーズンオフの冬休みを除けば、春休みと夏休みしかない。春休みに開催される選抜は出場32校、試合数31試合に対し、夏の選手権は各都道府県大会を勝ち上がった49代表が48試合を戦う。開催期間も当然長くなるため、夏休みに行う以外、選択肢はない。

2部制4試合も不可能ではないが、そもそも放課後の練習時間を制限されることの多い公立校が、夜の遅い時間帯に試合をやること自体、不自然に思えて仕方ない。ナイター設備の下、長時間練習ができる私学との不公平感も生まれる。検討が始まった7イニング制が導入されたら試合時間は短くなり、選手の負担は減るが、野球の根本ルールが変わるため、現場からは反対の声も多い。