スター扱いから一転、「袋叩き」へ
ある環境省の担当は、私にこうつぶやいた。
「こんなに環境大臣が注目されて記者さんが集まることなんてこれまでありませんでした。記憶する限り小池百合子さんがクールビズを提唱したとき以来かもしれません……」
とはいえ、このときの進次郎には大臣になった高揚感からか、自身に慢心や隙があったのは間違いない。言ってみれば自分で蒔いた種である。国民的に注目されていた進次郎には多くの記者が同行し、その一挙一動を報道した。だからちょっとした失言も見逃されずに逐次報道され、日本中が知るところとなった。
とくに「セクシー発言」については、本来の意味がまったく報道されずに語感のみが一人歩きしてしまい、瞬く間に進次郎を揶揄・中傷する“キーワード”となった。
これまでスター扱いしていたメディアも手のひら返しをして「叩きつぶす」側に転じた。まさにかつて進次郎自身が語っていた、「良く報じてもらえるときは、叩きつぶされるスタート」どおりの展開だった。
あふれる思いが「ポエム」になってしまった
この頃から進次郎の発言をとらえて「ポエム」「構文」と揶揄する声や誹謗中傷が、ネット上であふれるようになってきた。
2019年9月、東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を中間貯蔵施設から30年以内に県外に搬出することについて、記者から進んでいない現状と見通しを問われた進次郎は、「これは福島県民の皆さんとの約束だと思っています。その約束は守るためにあるものです。全力を尽くします」と語った。
そして具体的な取り組みについて記者から問われると、「30年後の自分は何歳かなとあの発災直後から考えてきた。だからこそ私は健康でいられれば、30年後の約束を守れるかどうかという節目を、私は見届けることができる可能性のある政治家だと思います。だからこそ果たせる責任もあると思う」と発言した。
本書の第4章で紹介したとおり、福島の復興は進次郎がライフワークとして取り組んできた課題だ。なかでも除染廃棄物の県外搬出は、解決策が容易に見つからない問題で、記者の質問はどんな政治家であっても「これはこうする」と答えられないものだった。通常こうした質問には、普通の政治家であれば「善処しています」などと適当にかわすだろう。
しかし、進次郎はあふれる思いを込めて発言したばかりに、わかりづらい「詩的」な発言になってしまった。実はこれまでも進次郎にはこうした発言がよくあったのだが、人気絶頂の頃は特に意に留められることはなかった。しかし風向きが変わると、こうした発言が「ポエム」「構文」と面白おかしく取り上げられるようになってしまった。