今後の成長戦略は不透明なまま
今回の決算発表会でセブン&アイの井阪隆一社長は、「今回は環境変化への対応が遅れ業績面で大変なご迷惑をおかけしました」と言及したうえで、今後セブン‐イレブン事業において何にどのくらいの規模で投資して価値を高めるかについては、「セブン‐イレブンは生活に密着した、顧客の地域に密着した存在として価値をこれからますます発揮できるのではないか。投資のチャンスがあれば、新地域への投資ということも考えられる」と述べるにとどまっています。
このように、井阪社長は、コンビニ事業において新たな国に投資する可能性には触れたものの、具体的に何に投資するのかについての言及がなかったことから、中核のコンビニ事業における今後の成長戦略は不透明のままであると言えます。
セブン&アイは、ACTの買収提案に対する対抗措置として構造改革を急ぎ、企業価値を上げるとの方針を打ち出していますが、今回の決算発表会では、グループ再編計画による構造改革のフレームワークは示せたものの、最も重要な中核のコンビニ事業の成長戦略が打ち出せていないことから、決算発表会翌日の2024年10月11日の株価は一時前日比で5%減少、終値が1%安となり株式市場の評価は得られませんでした。
買収調査の間にどのような策を打つのか
ACTの買収事案については、FTC(米国連邦取引委員会)がすでに調査を開始していますが、その調査には1年半ほどかかると言われています。
セブン&アイでは、社外取締役や外部識者などで構成される特別委員会(委員長は取締役会議長のスティーブン・ヘイズ・デイカス氏)を設置して対応の検討が進められており、この委員会がどのような判断を下すのかが今後の展開を考えるうえで重要な位置付けとなります。
ACTが現在提案している約7兆円という買収金額は、現在の時価総額の2割増し程の金額でありますが、この金額がセブン&アイの企業価値を適切に評価したものか、あるいは長期的な成長につながるものかといった議論の検討により、将来の企業業績を見越して株主にとって最適な選択が何であるかが問われることになります。