目指す意外な将来像
「やってみたい」「おもしろそう」を重視し、トレンドに合わせて流動的に仕掛けていく3COINS。肥後さんはそれこそが「自分たちの強み」と言い切る。そこに筆者は、顧客第一主義で従業員を信頼する大阪商人の血脈を見る。
いつの間にか雑貨だけでなく家電や食品を展開するようになり、今年には古着の販売も試行するなどチャレンジをし続ける3COINSは、“300円均一”から、ライフスタイル全般を扱う店へと変貌を遂げつつある。
これまで3COINSといえば、「100円均一よりはちょっといい商品が並ぶ店」といったイメージで、ライバルといえばダイソーやセリアが近かった。だがここにきて、どちらかといえばそのイメージは無印良品に近づいてきていると言えるだろう。
そう告げてみるも、肥後さんは「滅相もありません。あんなにしっかりとブランディングされている会社と比べていただいて、ありがたい限りです」と謙遜する。
確かに無印では、「自社のありたい姿」に則り、明確な基準に沿って商品を展開する。「顧客にこびない、ブレない」無印と、「顧客目線で自分がほしい、やってみたい」を大事にする3COINS。その思考は真逆だ。
「あるべき姿がない」ことの意味
一方で無印は一時苦戦を強いられ、現在立て直し中であるのに対し、3COINSは新型コロナウイルス流行下の時期を除き、ずっと上昇基調にある。この結果からも、「顧客がいまほしいもの」と対峙し続ける3COINSの強さを感じることができる。
肥後さんに、「ライバル企業はどこか」と聞いてみた。返ってきたのは、「どこの企業がライバルなのかを考えたことはない」との答えだった。その背景には、彼ら自身が「3COINSが今後どこに向かっていくのかを絞り込んでいない」ことが挙げられる。
意地悪な見方をすれば、明確な“ありたい姿”“あるべき姿”が定まっていない点に、不安要素を見出すこともできる。
さらに言えば担当者の個性に頼る3COINSのやり方は仕組み化からは程遠いし、社内インフルエンサー制度は炎上リスクもはらんでいる。一般的には企業の規模が大きくなればなるほど、忌避しがちな手法でもある。それでも3COINSは、これらを“強み”だと捉え、成果を上げている。
今後3COINSは、女性顧客の年齢層の幅の拡大や、男性顧客の拡大に乗り出すとしている。枠にとらわれない挑戦でどこまで進化し続けるのか、ぜひ注目し続けたい。