雑貨店「3COINS」が好調だ。現在、全国に330店舗(2024年9月現在)を展開している。ライターの松田小牧さんは「徹底して消費者の目線に立ちつづける姿勢が評価されているのだろう」という――。(後編/全2回)
3COINS
撮影=プレジデントオンライン編集部

1人当たり月40もの新商品を作り出している

前編から続く)

2024年7月末に発表されたパルグループホールディングスの連結決算によると、売上高・利益ともに3年連続で過去最高を更新。この好調をけん引しているのが、300円の雑貨などを販売する3COINSだ。

営業利益は全体では前年同期比10.5%増のところ、雑貨事業では実に54.9%増となっている。価格の安さに品質の高さ、投入スピードの速さ……そのすべてが時代にマッチした。

月に700~800点にも及ぶ新商品を企画するのは、20人の商品企画担当者だ。「キッチン」や「キッズ」など、カテゴリーごとに1~2人の担当者が配置される。かつては「適性がある」と見込んだ人材を指名していたが、現在は挙手制となっている。

ディレクターの肥後俊樹さんは「数年前まで、商品企画の担当者は7人ほどしかおらず、パツパツの状態でした」と話すが、20人でも1人当たり月40アイテムほどを新たに生み出さなければならない計算であり、決して楽とは言えないはずだ。

【図表1】3COINS販売個数ランキング
定番商品がありつつも、「推し活」商品がランクインしているのは興味深い

データより大事なのは熱量

だが、「みんなやりたいことが多すぎて、その思いをどのように整理していくかが大変なんです」(肥後さん)という。

3COINSの躍進を支えるのは、まさにその熱量だ。企業の中には、「データから売れ筋の商品を割り出し、それに沿って商品開発を進める」という企業も少なくない。

だが3COINSでは、データはもちろん確認する一方で、最終的には担当者の「これがやりたい」といった熱意を重視する。

会社からの指示も最低限にとどめ、担当者に大きな裁量を持たせる形だ。仮に実現が難しいものを提案したとしても、肥後さんは頭ごなしに否定するのではなく、「なぜそれをやりたいのか」を丁寧にヒアリングし、違う形で昇華させていく。