血糖値をゆるやかに上げて、ゆるやかに下げる
通常、栄養バランスの整った食事をした場合、血糖値はゆっくりと上がります。インスリンは、血液中のブドウ糖の量にあわせて分泌されるため、血糖値がゆるやかに上がれば、インスリンもゆっくりと分泌されます。すると、細胞がブドウ糖を招き入れるスピードもゆっくりとなり、血糖値もゆるやかに下がります。
血糖値がゆるやかに上がり、ゆるやかに下がるように食べる――。
これこそが食事の理想形で、子どもの脳とメンタルを良好な状態に整えます。
ところが、食事の仕方によっては、血糖値が急激に上がり、急激に下がるという現象が起こります。血糖値が乱高下してしまうのです。この血糖値の乱高下を引き起こす食事が、炭水化物ばかりの食事、あるいは炭水化物を大量にとる食事です。
ブドウ糖には、ほかの栄養素より消化吸収の「スピードが速い」という性質があります。しかも、空腹時はブドウ糖の吸収がなおのこと速くなっています。
朝食に「小麦粉のパンだけ」「パンにジャムを塗っただけ」という食事が問題なのは、血糖値の乱高下を起こすから。それが脳に大きな負担を与えるわけです。
ブドウ糖が脳をエネルギーで満たすのは、ほんのわずかな時間
血糖値が乱高下することを「血糖値スパイク」と呼びます。
血糖値の上昇と下降の仕方が、グラフにすると大きな釘のように、急激に上がり、その後、急激に下がることから「血糖値スパイク」と名づけられました。
やる気のなさや集中力の欠如、だるさ、眠気、疲労感、イライラ。こうしたことは、じつはこの血糖値スパイクが引き起こしているケースが多いのです。
空腹時に糖質が多く含まれるものを口にすると、この血糖値スパイクが引き起こされます。たとえば、寝起きにパンだけという朝食スタイルは、血糖値スパイクの原因に。
また、間食にスナック菓子や砂糖たっぷりのスイーツを食べたり、ジュースやスポーツドリンクなどの清涼飲料水を飲んだりしても、血糖値スパイクが起こります。
「おやつにスナック菓子やせんべい、クッキー」「のどが渇いたらジュースやスポーツドリンク」というスタイルが一般的になりつつある現代では、こうした食べ方が、脳に悪影響を与え、子どもが勉強に集中できない原因になっていることに気づかない人も多いかもしれません。
実際、「ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源」という人もいまだにいます(脳は、ブドウ糖のほかにも「ケトン体」という脂肪が分解されてできる代謝物もエネルギー源にしています)。
しかし、こうした糖質のとり方をした場合、ブドウ糖が脳をエネルギーで満たすのは、ほんのわずかな時間です。