安倍氏には「弱みを見せたら負けだと…」

当時、コロナ禍の中、安倍首相夫人の昭恵さんが大分県の宇佐神宮に参拝していたことが問題になったが、安倍首相は「問題ない」と退けた。森友学園の国有地売却疑惑で追及された時と同じですねと聞くと、

「あの時も、私や妻が少しでも関わっているとしたら、総理大臣はもちろん国会議員も辞めると断言された。関わっているはずはないし、これぐらい値引けなんて、そんなことをご自身も奥様もおっしゃるはずもないのであって、法的には何ら問題ないことですよ。だけど、それなら、関わっているとしたらという言葉はピッタリこないですね。

法的にはもちろん何の問題もないけれど、公文書が書き換えられたことや、それに関わったお一人の命が失われたことは本当に申し訳ないことでしたといえば、大勢の人がそうなんだねと思ったでしょう。

だけど安倍さんとしては、謝ったら終わりだ、弱みを見せたら負けだという強い信念みたいなものを感じますね」

当時としては、かなり踏み込んだ安倍批判を口にした。

令和2年4月7日 安倍内閣総理大臣記者会見(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

当時語っていた「政治家魂」とは

ノンフィクション・ライターの常井健一氏が中村喜四郎衆議院議員について書いた『無敗の男』(文藝春秋)の中の、「安倍政権の一番の貢献は、国民に政治を諦めさせたことだ」という言葉を石破氏に紹介した。石破氏は、

「中村喜四郎先生がおっしゃるように、国民に政治を諦めさせたなんてことは、我々政治家としては本当に申し訳ないことで、やっぱり政治は信じられる、というのを取り戻していかないといけません」

インタビューは、森友学園の国有地払い下げに関する文書改竄を命じられ、それを苦に自殺した近畿財務局の赤木俊夫さんの遺書をスクープした元NHK記者の相澤冬樹氏の話に及んだ。いくつものスクープをNHK在職中に放っているのに官邸と親しい報道局長に疎んじられ、退職して大阪の地方紙に移り、執念の末に赤木さんの遺書を公表したといった私に、

「相澤さんの諦めないというジャーナリスト魂は素晴らしいし、私はそれがなくなったらジャーナリストは終わりだと思います。NHKの上層部のお気に召せば、あれほどの記者だから、管理職として栄達し、理事にもなったかもしれない。だけどそれよりもジャーナリストとして大事なことがあるだろう、それは使命感だと思うんですね。

私たちも同じで、「大臣にしてやるから自分の考えを曲げろ」と言われたら、それならならないと言えるのが政治家魂だと、私は思っているものですから。