「農家の補助金を打ち切れ」は誤り

【堤】今や“有識者やインフルエンサー”が口を開けば、やれ家族経営の農家を解体しろとか、補助金を打ち切れとか、そんなフレーズばかり。

YouTuberが「棚田なんて無駄、観光客用の飾りでしかないじゃん」なんて平気で言いだす始末です。生産性の面でしか見てなくて、棚田の持つ多くの価値を全くわかってない。

写真=iStock.com/mitumal
YouTuberが「棚田なんて無駄」と言い出す(※写真はイメージです)

今は多くの人が「スマホ脳」で、すぐ答えが出ないとイラっとしてしまう。インフルエンサーが断言すると、深く考えずにすぐ「そうか、棚田って無駄だな」と思い込んでしまうので厄介なんです。

【藤井】東京大学大学院特任教授の鈴木宣弘先生はこんな話をしていました。

コロナで外食需要が減った時、米が余るようになった。すると日本の政府は「米が余って値段が暴落するので、米を作るな、流通させるな」という方向に動く。

そうではなく、余った米は国が買い上げて、人道支援や生活困窮支援に回すべきなのです。

実はアメリカもそういう発想でやっている、というのが鈴木先生のお話でした。

アメリカは農家の所得を補填している

【藤井】米の一俵当たりの値段が1万2000円から9000円に下がった場合、アメリカはその差額分を補填しています。それこそ多額の税金を使って補填しているとも聞きます。アメリカでは「米が余ったら減産しろ」とはならないのです。

これは経済学でいう、財政政策によるプライスコントロール(価格調整)政策です。アメリカはこれを徹底しているのです。

日本も同様に、国が買い上げたり、補助金を出すべきだと鈴木先生はおっしゃっている。そうすることで、農家も助かるし、人道支援、生活困窮者支援にもなる。そのために財政出動が必要なんだと力説されていて、全く同感でした。