自らは粗末な服を着た仁徳天皇

【藤井】第16代天皇である仁徳天皇の「民のかまど」の逸話を思い出します。

仁徳天皇が高い山に登って、すそ野に広がる村々を見下ろしたところ、炊事の煙が上がっていないことに気づきました。仁徳天皇は「民は食べるものにも困っているのではないか」と考え、租税を免除して、民の負担を軽減し、生活が豊かになるまでお金を徴収しないことを約束したといいます。

仁徳天皇自身は、服も粗末なものを着て、宮殿の屋根さえ葺き替えなかったと伝えられています。

民への愛情、治世者の役割、さらには租税と経済の関係性まで、今の政治家よりずっと理解されていたことがわかります。

山田孝之・松山ケンイチが田植えをする理由

【藤井】先日あるサイトで、俳優の山田孝之さんと松山ケンイチさんが田植えをしている様子を見ました。山田さんが主宰する「原点回帰」という団体が水田を持っていて、二人で泥だらけになって田植えをしながら、農業や自然の恵みへの感謝について語っていました。

藤井聡、堤未果『ヤバい“食” 潰される“農” 日本人の心と体を毒す犯人の正体』(ビジネス社)
藤井聡、堤未果『ヤバい“食” 潰される“農” 日本人の心と体を毒す犯人の正体』(ビジネス社)

「田植えをすることで、土と繋がっている、一体になった感じがする」「農作物を輸入に頼っているだけだと絶対無理だし、農は絶対になくならない、なくしちゃいけないものだと思う」「昔からの固定種だったり、農薬肥料に頼らなくても作物ができるっていうことがちょっとずつ浸透していけば、食料難だとか、何か災害があったときの焦りとかが減ってくることに繋がっていくと思う」とお二人とも語っていて、農についての問題意識を共有していただいていると感じました。

世代で言うと、彼らは30代後半から40代前半くらい。この世代は、それより前の世代とは違って、農業に対してダサいとか、古い、カッコ悪いといった間違った先入観を持っていないのでしょう。

若い世代はより自然に近い農業に入ってくる

【堤】山田孝之さんが実践しているのは、「菌ちゃん先生」こと、長崎の吉田俊道さんが指導している「菌ちゃん農法」。実はこの「菌ちゃん先生」は私の著書『ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか?』(文春新書)で取材し、その考え方にとても感動した方の一人なんです。

山田孝之さんが農法を伝承してもらっているもう一人の師匠が、在来種のタネを守っている「野口のタネ」の野口さんです。

若い世代は、変に新自由主義や効率主義に脳が染まっていない分、お金が全てという世界の息苦しさ、生きづらさをストレートに感じて、その外に出ようとしていると思います。

放牧した牛のミルクでお菓子を作る北海道の企業の社長さんを取材した時も、今高齢者が次々に畜産をやめる一方で、より自然に近い「放牧」に若い新規農業者が入ってくるとおっしゃっていました。

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