※本稿は、藤井聡『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。
「国の借金」ではなく「政府の負債」
――藤井先生、岸田総理は真っ先に数十兆円規模の経済対策を実施するとおっしゃっていましたが、大丈夫ですか?
日本はバブル崩壊後から、ずーっとひどい財政赤字なんですよね。政府も政治家も経済学者もマスコミも、「日本には大量の借金があって、このままなら破産する!」といい続けています。さらに、新型コロナウイルス対策で赤字が膨らんで、2021年6月末時点では、「国の借金は過去最大の1220兆円、国民一人当たり992万円になる」と報道していました。だから政府は大金を出したくても出せないんじゃないですか?
【藤井】いいえ、出す気になりさえすれば、出せます。彼らのいってることは、真っ赤なウソなんですよ。
――えっ、どこがウソなんですか?
【藤井】全部。1から10まで。何もかも。どれだけ、この一連のウソにだまされている人が多いか。それがコロナ対策にも、大きな弊害をもたらしています。たとえば給付金にしても、政府が出そうと思えばまだまだ出せるんですよ。でも、文句が噴出しないのは、ほとんどの国民がこのウソにだまされているからです。
――10万円給付が決まったとき、私も友人たちも日本は財政難なのに構わないの? と心配したくらいでした。それでも私はしっかり給付金をいただきましたけど、友人のなかには遠慮して給付金の申請をしなかった人もいました。
【藤井】すっかりだまされていますね。まず、「国の借金」という表現からして間違いで、正しくは「政府の負債」です。「国の借金」っていうと、私たち国民も借りているような錯覚に陥りますが、完全な間違い。そもそも「国」のなかにはいろんな人、主体がいます。私たち国民もいれば、いろんな会社もあります。そして、それらとは全然別の存在として「日本政府」というものもあるわけです。マスコミなんかでいわれている「国の借金」とは、国でも国民でもなく、「日本政府の借金」のことなんですよ。
日本銀行の資金循環統計でも、「政府の負債」と書かれています。「政府」が借りているのが「政府の負債」であって、「国の借金」でも「日本の借金」でも、ましてや「国民の借金」でもありません。