「菅・二階」の復権を公明党は歓迎
結果として、自民党総裁選をめぐる「風」は、公明党に有利に吹いた。茂木氏や河野太郎氏など、麻生氏に近いとされた候補が総裁選を勝ちあがる可能性は低いと早期のうちに判断され、これによって公明党内でも「山口氏続投論」は小さくなっていった模様である。
また、自民党新総裁となり、新首相となった石破茂氏の内閣や自民党人事の陣容を見てもわかるが、これまでの岸田政権下で自民党内の傍流に追いやられていた、菅義偉元首相や二階俊博元幹事長系統の人材が、石破体制では存在感を増している。
菅氏は創価学会の政界担当と呼ばれた佐藤浩副会長と親しく、安倍政権時代は官邸の菅官房長官と創価学会の佐藤副会長が、自民党、公明党という政党組織を飛び越えて、いわば「政教合体」型の連立運営をしていたことはつとに有名だ。
また二階氏も昔から公明党とは親密で、2009~12年の民主党政権期に自公の協力関係が崩れなかったのは、二階氏が自公間のパイプ役として丁寧な調整を重ねていたからだというのも、政界では割とよく知られた話である。その両氏およびそこに連なる人々が石破政権誕生に大きく手を貸し、実際に人事などを見てもそれなりの待遇をされている。そうした部分を見ても、公明党にとって石破政権はありがたい存在ではあろう。
自民党内の「公明党嫌い」は力を失った
自民党内では、石破氏に総裁選で敗れた高市早苗氏や小林鷹之氏らが、露骨に「次」を狙う姿勢を見せ、岸田前首相もその政治的影響力を特に落としているわけではないとの見方が多々語られている。しかし、同時に多くの識者がほぼ一致して言っているのが「麻生氏の退潮」で、これはほとんど「自民党内の反公明派の退潮」と同義である。
さらに自民支持層のなかのいわゆる「岩盤保守層」、今回の総裁選では高市早苗氏を応援したような人々は、憲法改正に難色を示し、中国とも親密な姿勢を取る創価学会、公明党について、露骨な嫌悪感を示す向きが強い。石破政権にはそうした色彩の保守色が薄いことも、公明党にとっては悪い話ではないだろう。
もちろん、石破首相が近く行われる解散総選挙をどう戦い抜き、その後の政権運営をいかに行っていくのかは、まだよくわからない。しかし、公明党にとっては自民党との間に吹き荒れた「すきま風」が、かなり弱まる方向に向かったこの秋の政局状況だったと言っていいのではないだろうか。
そもそも自民党のなかに一定の「公明党嫌い」が現れた最大の原因の一つは、近年の選挙において公明党の集票力が弱まっていて、「連立相手として頼りにならない」という不安感が、自民党内に広まっていたことである。
そういう意味では、昨年11月に死去した創価学会名誉会長・池田大作氏の「弔い選挙」とも位置づけられる次期衆院選で、石井公明党はどれだけの存在感を見せつけることができるのか。多くの政界関係者が、固唾をのんで見守っている。