手を叩いた後に合掌する作法はない

参拝するときの作法についても説明させてください。まず、境内に入るとき、鳥居の前で一礼します。境内に入らず神社の前を通るだけのときも、本殿に向かって一礼したいものです。

境内に進んだら、参道脇にある手水舎で手と口をすすいで清めます。このとき、柄杓に口をつけないように気をつけましょう。

神前(拝殿の賽銭箱の前)に進むところで、境内に入るときと同様に軽く一礼します。賽銭箱の前まで進み、拝礼を始めます。基本は「二拝二拍手一拝」。神社によっては四拍手のところもあります。手を叩くのは神様に対する敬意を示すためで、古くから自分より身分の高い人に対して行われてきた仕草です。手を叩いた後に合掌してお祈りする人を見かけますが、実は神道に合掌という作法はありません。

では、どのタイミングで祈ればいいのか。一連の動作は神様に対する礼儀作法であって、どの動作に祈りをこめるかといった話ではありません。強いて言えば「二拝二拍手一拝」の最後の、深い礼をしているときでしょうか。拝礼が終わったら一歩下がり、そこでまた軽く礼をし、神前から離れます。

「昇殿参拝」で祈願する本人が御祭神に玉串を奉納

合格祈願や事業の成功を祈るときなど、具体的なお願いがある場合は、正式には昇殿参拝を行います。神職に願い事を祝詞にしてもらい、「どこの誰々がこういうお願いを持って参りました、どうか叶えてあげてください」と神様に奏上してもらうのです。そのうえで、祈願する本人が御祭神に玉串を奉納します。

通常の拝礼よりも神様により近い場所で参拝するわけですから、正装に準ずる服装をし、手順なども神職や巫女に教えてもらう必要があります。基本的には自分が住む地域の氏神神社にお願いしますが、「合格祈願を天神様で」「必勝祈願を鹿島神宮で」など、それぞれの願い事の内容に沿った神社にお願いしても、問題ありません。

昇殿参拝の申し込みは、神社の社務所で行います。行事の都合により昇殿参拝ができないこともありますので、できれば希望日の数日前に、目的や参加人数を伝えて相談しましょう。玉串料は神社ごとに金額が決まっており、目安は5000〜3万円ほど。具体的な金額については、遠慮なく神社に聞いて大丈夫です。

神社に奉納するお金は慶事用の熨斗袋に入れ、玉串料または初穂料と書きましょう。仏事用を用いたり、「お布施」などと書いたりしてはいけません。

神様への願い事がかなったときには、お礼参りをすることをおすすめします。べつに高額な奉納をする必要はなく、拝殿前で感謝の気持ちを込めて参拝するだけでも十分です。もちろん、商売繁盛の願いがかなったからと、少し玉串料をはずむのもいいでしょう。重要なのは形式ではなく、心からの感謝の気持ちを神様に伝えることです。