「メール返信は1日以内」が常識なわけがない

そこで第3のルール登場。「こういう場合はこうしてはいけない」「こういう場合はこうすればよい」というのを非常に具体的に定めるもの。これがいわゆるマナーとか常識です。「メールは1日以内に返信すべき」とか「ペットボトルの水は冷やして出しちゃいかん」とか。

だけど、道徳の原理→法律→マナー・常識となるに従って具体的にはなるけど、その分だけ従うべき理由があいまいになって、判断が難しいものがたくさん入ってくる。おまけに、具体的に見えて案外スカスカ。だから余計に判断に迷うしモヤモヤするのです。

「メールは1日以内に返信すべき」って、「相手を待たせて不快にさせないため」なんだろうけど、それはこっちだって都合があるし相手の気質だってあるわけだし、「1日以内」といってもそれって夜中の0時まではオッケー? 明日の朝イチまで大丈夫? 寛容な人なら数日でも待てるんじゃ……。だから、必ずそうしなければならないというより、まあ何と言うか、「相手への気づかい」みたいな?

我々はルールを嫌います。縛られたくない、自由がいい。これはごく自然な思いとはいえ、あまりに自由だとどうしていいかわからない。そこにご意見番とかルール講師みたいな人が「メールは1日以内に返信すべき」などとすごく具体的な指示を発明する。すると、「そうなのか」と思ってつい従っちゃう。だって考えなくていいし従っておいたほうが楽だし。で、人が従っていると「そういうもんなんだ」となって、それが無言の圧力となり、ルールもどきがいつのまにか「これぞルール」っていう顔をしだす。「これが常識だよ」とか「君はマナーを知らんのか!」とか。

でも、わざわざ「常識だ」と言わなければならない(つまり、知らない人がいる)以上、それが常識なわけがないのです。道徳の原理と違って法律はローカルですが、マナー・常識はもっとローカル。場合によっては個人的。「マナーを知らんのか!」と言われても、「それはあなたの思うマナーですよね」と言い返したくなっちゃう。