民間企業なら州首相は「辞任しているはず」

また、マクデブルク市長、シモーネ・ボリス氏は、「インテルのプロジェクトが2年後に再開することは確実だと思っている」とか、「われわれが供与した立地条件は非常に魅力的なものであり、インテルは2年後もきっと欲しいと思うはず」などと楽観的なことを言っていたが、本人さえ、それを信じているかどうか?

一方、同州の野党の左派党は、「夢はすでに終わった」、「予算は教育と難民問題に差し替えるべき」と主張。同じく野党のAfDは、州の経済政策の軽率さを指摘し、「民間企業なら、いわゆるプロジェクトマネージャーであるハーゼロフ州首相は、辞任しているはずだ」と、氏の責任を追及した。まさにその通りだ。

また、緑の党は、「たとえインテルが来なくなっても、他の企業を誘致すればいいだけで、それほどの悲劇ではない」と、いつも通り経済音痴丸出し。

なお、大打撃を受けているのは参画するはずだった企業で、彼らは、計画がこんなにあやふやでは投資はできないとし、「はっきりイエスかノーを決めてほしい」と市に強く要請した。ちなみに、参画企業にも補助金が出ることが決まっていたが、それも現在、すべて宙に浮いてしまった。

「既存の会社の犠牲の上に外国企業を支援している」

インテル側は、「影響をなるべく小さくとどめられるよう努力する」と言っているようだが、そもそも最初から本気だったのかどうか? 例えば私が奇妙だと思ったのは、工場建設の起工式(鍬入れ式)が今年中に行われるとまことしやかに言われていながら、9月になってもまだその日程が決まっていなかったことだ。これほどの規模の建設事業なら、式に集まる顔ぶれを想定しても、2カ月前にようやく日程が決まるなどということは、本来ならあり得なかったのではないか。

ifo経済研究所のクレメンス・フュースト所長は第1テレビのインタビューに答えて、「企業の投資計画の変更や、それに伴うリストラはしばしばある。しかも、インテルは現在、最新のテクノロジーの開発に乗り遅れたことを批判されており、なぜ政府が、そのインテルに、このような多額の補助金を提供しようとするのか、その背景に不明な部分がある」とまで言っている。

また、キールの世界経済研究所シュテファン・コーツ氏も同様の意見で、「Wirtschaftswoche」誌のインタビューで、「100億の補助金がすでに問題」と指摘。しかも、インテルが来たら、来たで、彼らが他の企業から技術者を引き抜くことは確実なため、「ドイツ政府は、既存の会社の犠牲の上に、外国企業を支援することになる」。いずれにせよドイツ政府のやり方は、自由経済の範疇から離れていると、かなり辛辣な批判だった。