政治の圧力で数字を動かした「疑惑」
実は毎月勤労統計の不正に絡んで、調査方法の変更について別の「疑惑」も浮上した。調査では、調査対象の入れ替えを行っていたが、2014年調査の入れ替えの結果、現金給与総額の伸びが軒並み下方修正された。当時、安倍晋三内閣が「賃上げによる経済好循環」を掲げていたが、伸び率のマイナスが表面化したことに、総理大臣秘書官から「問題意識」が厚生労働省に伝えられ、2018年の調査から入れ替え対象を変更。この結果、賃金の伸び率がプラスになったのだ。
政権が都合の良い数字を出すために調査方法を変えたのではないか、という疑惑が指摘されたが、藪の中のまま終わっている。つまり、政治の圧力で、統計すら数字を動かせてしまう、ということなのだろう。
政府がEBPMをことさら口にするのは、エビデンスを重視する風土が霞ヶ関にそもそも欠けていることの裏返しでもある。当然、統計軽視の風潮では、統計に携わる人員を増やしたり、統計専門家を多く採用しようというムードは出てこない。人海戦術に頼っていた大正以来の「聞き取り」が、そのまま放置され、代替方法すら真剣に議論されてこなかったのも、そうした統計軽視の風潮が根底にある。