若い世代は知らない小泉純一郎総裁当選時のフィーバー

しかし、自民党のタブーである「郵政民営化」を主張し、党内の雰囲気は「あいつだけはやめてくれ」。「郵政民営化」以外にも「全国特定郵便局長会12万人に逆らえなくて創価学会250万人に逆らえるのか」「憲法九条改正は難しいから八九条から行こう」のような過激な発言もありました。

ちなみに日本国憲法八九条とは「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」です。

この時の小泉は304対87の大差で橋本に敗れています。

しかし、その6年後、平成13(2001)年には、ほとんどダブルスコアで橋本に勝利します。このときも「郵政民営化」を絶叫。選挙は非常に盛り上がり、テレビジャックしました。

あれから20年以上経っていますから若い人は知らない、あるいは、覚えていないかもしれませんが、小泉が勝利した総裁選は後にも先にもないほどの熱狂ぶりで「小泉フィーバー」と呼ばれました。

小泉純一郎首相とアメリカ合衆国国防長官ドナルド・ラムズフェルド、2004年11月14日、撮影=アメリカ空軍(写真=Andy Dunawayアメリカ空軍下士官/PD US Air Force/Wikimedia Commons

平成時代以降、幹部だけで決めるのではなく、党員にも開かれた選挙で総理・総裁を決めるという文化が定着してきました。普通の日本国民が支持層の自民党ですから、こうした総裁選を通じてアピールできるようになったことは党のイメージアップにつながります。自民党の総裁選びに関しては、改革は相当に進んでいると言っていいでしょう。昔の総裁選は、「飲ませ食わせ抱かせ」でいつの間にか常軌を逸した買収合戦になり、それをやめようと「クリーン三木」を選んだ総裁選は密室談合の極みの椎名裁定。そんな時代よりは、はるかに健全化しました。

小選挙区制で「選挙に勝てる」総裁を選ぶシステムになった

小選挙区制にした理由のひとつとして、選挙に勝てない総理・総裁を選べないことがあります。小選挙区制とは怖い制度で、政権与党であったカナダ進歩保守党が解散前の155議席からわずか2議席に減ったという例があります。国民の支持を得られる総理総裁でないと選挙に勝てない。だから1995年や2001年の自民党総裁選は盛り上がったのです。

かつての中選挙区制ではボス政治家は絶対に落選しませんし、自民党は基本的に負けません。だから談合で総理・総裁を決めていたのです。小選挙区制のもとでは自民党といえども下野・落選の危機があるので、緊張感が保たれます。