リフォームした自宅は「賠償御殿」と揶揄される

その後も、住人からの金の催促は続いた。

「保険が入ったなんて、誰が言ってるのかしら!」

加代子は、家に来た住人に問い詰めると

「和夫さんとか、敏子さん……」

やはり……。事故が起きてすぐに駆けつけてくれた人々だった。和夫は、加代子が渡した10万で飲み歩いているようだった。加代子は体中に怒りが込み上げた。

加代子は、葬儀代の事が気にかかり、敏子に電話で問い合わせると、敏子から告げられたのは想像もできない法外な金額だった。

「そんな額、払えません! 私はお願いしてませんから」
「あら? 加代子さん、あなた私に任せるって言ったじゃない!」
「夫が亡くなったばかりなのよ。弱みに付け込むなんて卑怯よ!」

加代子はすぐ息子に相談し、葬儀代については、弁護士に交渉してもらうことにした。

住民の下心に気が付いた加代子は、自宅に人が来ることが恐ろしくなり、インターホンや監視カメラを設置しようとリフォームを依頼した。リフォームが完成した加代子の自宅は、以前とは見違えるように立派な家になったが、その様子をみた住人たちは「賠償御殿」と揶揄しているという。

写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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身近な人による支援の落とし穴

法外な葬儀代を請求された加代子は、息子を通じて東京の弁護士を依頼していた。地域の弁護士は住職と親しく、信頼ができなかったからだ。

地域には和夫や敏子のような人ばかりでなく、親身になってくれる人々も存在したが、小さなコミュニティーでは、被害者も加害者家族も少なからず人間関係に悩まされている。本件のような露骨な金銭の請求ならば法的解決に持ち込みやすいが、過剰な支援に「結構です」とは言えず、周囲に気疲れしてしまっているという相談も多く寄せられている。

だからこそ、使いたいときに利用できる第三者による支援が必要なのだ。