新NISAに積極的なのは「若者とバブル世代」

もっと踏み込んだ「個人消費テコ入れ策」が必要な理由がもう一つある。

2009年にギウリアーノ氏とスピリンバーゴ氏という2人の経済学者の連名で出された論文によると、各世代のお金についての価値観は、その世代が社会に出た時代、具体的は18歳から24歳までの経済環境に「一生左右される」。

つまり、今後景気が良くなっても、若い頃に不況を経験した「氷河期世代」の財布の紐は緩まない、ということだ。

大和証券の木野内栄治氏によると、新NISAに積極的なのは、20代から30代前半くらいの世代だという。アベノミクス以降の株が上がっている局面で社会に出た世代である。

次に積極的なのは50代後半以降のいわゆる「バブル世代」。一方、氷河期世代は投資にあまり積極的ではないという。

そうした氷河期世代の財布の紐を緩めるには、かなり積極的な政策が必要になってくる。

「日本人の努力不足」が原因ではない

日本では過去30年にもわたりデフレ経済が続く、世界でも異例の国となっている。

そんな中、人々の考え方や行動にはすっかり「デフレマインド」が染み付いてしまっている。

そのため、「実質賃金が安定的にプラス」という程度では、みな財布の紐を緩めてはくれないだろう。

エミン・ユルマズ、永濱 利廣『「エブリシング・バブル」リスクの深層 日本経済復活のシナリオ』(講談社+α新書)

個人消費を盛り上げるためには、先述したような「お金を使えば使うほど得をする税制優遇」など、かなり思い切った政策が必要だ。

「景気は気から」という言葉もあるが、あなどれない真実と言える。

日本が長期デフレに陥った諸悪の根源は、日本人の努力不足ではなく、バブル崩壊後に続いた「政府の経済政策の失敗」にある。

それによって歪められてしまった「日本人の価値観」を、さまざまな方策によって少しずつ解凍していくことができれば、日本経済復活の見込みは大きいものとなると期待している。

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