増税しなくても財政は改善する
なお、23年度の財政改善の幅は「過去最大」(現基準の資金循環統計が公表された98年以降)である。
日本政府は、「政府債務残高/GDP比」の上昇を抑制するために、「プライマリーバランス(PB)」(基礎的な財政支出と税収が均衡している状態)を目標としてきた。
だが、財政を改善するには、財政収支が黒字である必要はない。「名目経済成長率(=経済成長率+インフレ率)」が国債利回りを大きく上回っていれば、「債務残高/GDP比」は低下する。
要するに、マクロ経済学の考え方では、インフレになれば財政は改善するが、増税したからといって財政が改善するとは限らない、ということだ。
世界の経済学では常識
こう主張するのは筆者だけではない。例えば、アメリカのバーナンキ元FRB議長も、2017年に日銀が開催したシンポジウムで「日本はインフレ率を高めることで財政の持続可能性を高めることができる」と主張していた。
日本政府はそろそろ、こうした「マクロ経済学の常識」を踏まえた政策に転換すべきだ。
具体的には「増税により財政を改善させる」方向ではなく、「賃金上昇によるマイルドなインフレ」および「家計支援策による個人消費のテコ入れ」を軸に据えるべき時にきている。
財務省を中心とした日本政府もこうしたことはよくわかっている。特に「マイルドなインフレで財政を再建する」点については強く意識しているものと考えられる。