リスクをとった能力急拡大事例

能力獲得は早いほうがよい。当然である。しかしながら速い速度での能力獲得は同時に、リスクを増大させることを受け入れる必要がある。メルカリは成功の確証はないテレビCMに15億円を投資した。ビズリーチも同様に、テレビCMに多額の資金を投資した。

これは「テレビCMを活用して有効なマーケティングを実現できる」確証はないが、その不確実性を受け入れたということである。例えばプログリットが過去行ったようにTVCMを行ってもマーケティングに寄与しなかったということも十分考えられるのだ。

上記2社は成功例であるためリスクを受け入れ成功した素晴らしい会社として挙げられるが、投資が失敗した結果、事業閉鎖に追い込まれた事業は数えきれないほどある。

むしろ成功例のほうが少数である。高いリスクを受け入れられるからこそ、スタートアップというハイリスクだが稀に大成功するという経営スタイルが存在する。

生存した少数の企業のみを見て、リスクの取り方としてベストプラクティスであると評価するべきではない。

フリマ市場に参入したいが2年度目から黒字化は極めて厳しい

上はTVCMだけの例を挙げたが、スタートアップは通常複数のリスクを同時に取る。「レスポンス高速化のために1億円投資をしたなら、その分LTV(ライフタイムバリュー)の向上に貢献するのか」「同時に日本以外の多数地域へ進出し、3分の1以上の国において成功できるのか」など、計算できる範囲を遥かに超えたリスクを受け入れる。

中村陽二『インサイト中心の成長戦略 上場企業創業者から学ぶ事業創出の実践論』(実業之日本社)

検証を段階的に進めるというプロセスをスキップすることにより、低い確率ではあるが高いリターンを実現しようとするものなのだ。この考え方は『ブリッツスケーリング』(日経BP)を読むと学ぶことができるだろう。

メルカリに代表されるが、トップシェアを取った企業が利益を独占してしまうという市場構造の都合からこのような動きを取らざるを得ない状況は存在する。

このようなリスクはそもそも許容できないが、メルカリのようなハイリスクな動きを求められるビジネスに参入する計画を描いているなら、そもそもの対象領域を誤っているということだ。

フリマ市場に参入したいが2年度目から黒字化する必要がある、という制約条件を持っていたなら極めて厳しい戦いになったであろう。

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