どの政策より印象的だった高市氏のひとこと

高市氏も、9月9日の出馬会見で「ストーリーテリング」の話法を用いた。会見の結びとして、ある映画のシーンを取り上げ、終戦間際の時代にタイムスリップし、特攻隊員と恋に落ちた女子高生の言葉を引用して見せた。

「私たちが生きている今。誰かが命懸けで守ろうとした未来だった」

高市氏は、この言葉に続けて、「だから私も、日本を強く豊かにして未来に引き渡す責任がある」と強調したが、この部分は、出馬会見で訴えたどの政策よりも印象的に伝わったのではないかと考えている。

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「サナエあれば憂いなし。」というキャッチコピーは賛否両論

これに対し、小林氏は政策を論理的に語る話法だ。誠実さは感じられるものの、「ChatGPT」と揶揄されるように心に響かない。かつて人気調査で1位になったこともある河野氏は、話し方以前に、麻生派に残ったままで政治改革を叫んでも説得力に欠ける。

他の候補者は、良くも悪くも「いかにも政治家」という話し方で、「増税ゼロ」とか「仁の政治を行います」などと言われても、「あなたにできるの?」「なぜ今までやらなかったの?」という気持ちにしかならない。

信頼できる人かどうか、が大きな武器に

国内を見れば、物価高が続き、大地震への不安が消えず、少子化対策なども待ったなしだ。政治不信も根深い。

国際社会を見ても、中国による台湾統一が現実味を帯びる一方で、今年7月、中国軍(人民解放軍)の機関紙「解放軍報」が、「今、党内政治生活が正常さを失い、個人は家長制的なやり方で、鶴の一声で物事を決めるようなことが起きている」と、暗に習近平総書記を批判する論評を出したことは注目に値する。これは、一強体制を築いてきた習指導部に揺らぎが生じている証左だ。

頼みのアメリカは、次の大統領に、ハリス氏とトランプ氏のどちらがなるのか見通せない状況が続いている。

そんな大変な時期に選ばれる日本の政治のリーダーは、「信用して任せてみるか」と思わせる力があることが大きな武器になる。これから本格化する選挙戦では、その点にも注目したいものだ。