「売れないもの=死に筋」を見える化
1.データベースマーケティングへのアプローチ
今でこそ当たり前となったデータベースマーケティング。当時は、モノを売るには、「経験」と「勘」と「度胸」が大切だとされている時代でした。靴底を減らしてなんぼ、頭を下げてなんぼの世界です。
そんな時代に鈴木氏はこちらが売りたいものを売るのではなく、顧客が欲しいものを提供することが大切と考え、POSシステムを活用して各商品の売れ行きを詳細に把握できるようにしました。
セブン‐イレブンでは各店舗での売上データをリアルタイムで収集し、分析しています。売上が低い商品はすぐに棚から外され、売れ筋商品が増やされます。この迅速な対応が可能なのは、POSシステムを駆使したデータベースマーケティングのおかげです。結果的に、売上の最大化と在庫管理の効率化が実現しています。
多くの人が勘違いしていますが、POSシステム導入の最大の効果は、「売れるもの=売れ筋」がわかることではありません。「売れないもの=死に筋」がわかることです。
コンビニのスペースを思い出してください。決して広くありません。スーパーマーケットの数分の1です。その中で売上を最大化しようとすれば、死に筋を棚に置いている余裕はありません。限られた経営資源しか持たない弱者が強者に勝つためには、やらないことを決めることです。
コンビニも当初はスーパーに対して圧倒的な弱者でした。鈴木氏はPOSを使い、やらないことを決める戦略を徹底し、弱者であったコンビニを勝者へと転換させることに成功したのです。
顧客の「実は欲しいもの」予測もうまい
2.需要創造の巧みなアプローチ
セブン‐イレブンのもう一つの強みは、需要創造にあります。顧客の「いま欲しいもの」だけでなく潜在ニーズを掘り起こし、新しい市場を開拓しています。これは単に過去のデータに頼るだけでなく、顧客心理を深く理解し、未来の需要を予測するアプローチです。
例えば、1996年の消費税引き上げ時、セブン‐イレブンは「消費税還元セール」を実施しました。この大胆な戦略は、消費者の消費税負担に対する抵抗感を見越したものです。このセールは大成功を収め、売上を大きく伸ばしました。