釣り客が多い店舗では梅おにぎりが売れる

鈴木氏が挙げる好例として「釣具店前の梅おにぎり」があります。釣りに出掛ける人は腐りにくいご飯を求める傾向があることを読み解き、腐りにくいイメージが強い梅のおにぎりを大量陳列し、大幅な増収に成功しています。

鈴木氏も著書で言及していますが、鈴木氏はマーケティングを数字の分析で終わらせずに、そこに心理学の要素を付加しています。

過去の分析は大切ですが、それだけでは顧客の心理は読み解けません。過去の数字を分析した後は、人が心を持つ生き物であることを前提に、「これまでがこの数字であったのであれば、こんな商品を置いたらこんな購買行動をとるのではないか」との仮説を立てることが大切です。

そして、その仮説を実行しデータで検証する。この積み重ねが新しい需要を創造することに繋がっていきます。

週1回、大規模会議を開催した理由

3.徹底力への半端ないこだわり

セブン‐イレブンの成功の根幹には、並外れた徹底力があります。鈴木氏は毎週1回、加盟店と本部をつなぐ全国のオペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC、店舗経営相談員)を東京に集めて会議を行ってきました。その規模は千数百人にも上ったそうです。

この会議では、鈴木氏が自ら指導し、各店舗の運営方針を徹底します。現在は隔週でオンライン開催となっているようですが、これは驚異的な取り組みです。

人事管理とリーダーシップの概念
写真=iStock.com/tadamichi
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この徹底的な管理体制により、店舗運営の質が均一化され、顧客満足度が高まり、リピーターの増加に繋がっているのは間違いないでしょう。ですが、わざわざコストをかけてまで全国からOFCを集める必要があるのかと疑問に思う人も多いのではないでしょうか?

私もその一人です。ですが、鈴木氏がコストをかけてまでOFCを集めていたのには別の狙いもあったと考えます。それは、「なぜやるのか?」の徹底ではないでしょうか。