オジサンにとってこれほど嬉しいことはない
商品コンセプトが受け入れられ、販促と口コミで裾野が広がった。
アンケートには、ユーザーからは「肌にツヤが出た」「明るくなった」といった効果を実感する声が寄せられた。興味深いのはアンケートに「周囲からの反響」についての項目をつけたことだ。ここには、「子どもから肌がキレイになったと言われた」「同僚から印象が変わったと言われた」といった内容が書かれていた。
これは実感を込めて言うが、オジサンにとって「褒められる」ことほど嬉しいことはない。
このアンケートで家族や同僚からの反響を再認識し、より効果への実感と商品に好感を持った人は多いのではないか。
使用した実際の効果だけでなく、周囲からの「褒め」という情緒的な価値が継続のモチベーションになっているのだろう。
さらに、西山氏は「『サントリーのスキンケア商品』であることも市場の開拓につながっている」とも指摘する。
中高年の男性の意思決定には家族の意見が大きく左右する。本人が乗り気でも妻の一言でとん挫することは珍しくなく、「嫁ブロック」が強力に発動する。
そのため、何かを買う際にも夫は妻の目を気にする。外見をどうにかしたい。とはいえ、スキンケア商品を使いだして、洗面所に置いておいたら、妻は何というだろうか、娘にはキモイといわれないだろうか、そんな思いが頭をよぎる人は多い。
リピート率は95%
「サントリーは化粧品メーカーというよりは飲料メーカーの印象が強い。百貨店で売っている化粧品ブランドのものには気後れして手を出しづらいと感じている人でも、サントリーの商品ならばと購入しやすい傾向にあるようです」
さまざまな施策が奏功し、売り上げは初年度の22年は10億円を超え、23年は30億円だった。24年は45億円を目指す。そして驚くべきはリピート率で、定期初回購入者のリピート率は95%と高い水準にある。
人生100年時代。人と触れ合う時間も長くなっている。健康のみならず、外見をきにするのはもっともだ。そうした顧客の声に耳を傾け、悩みに向き合い、「中高年のおじさんがスキンケアなんてしない」という常識を疑いトライしたところがヒットの要因だろう。
時代は変わっても「やってみなはれ」の精神の重要性は変わらない。そして、会社に脈々と受け継がれていることを「VARON」は物語っている。