さらに、視聴者をオンラインストアに誘導する機能もすでに整備している。製品コマーシャルを視聴したユーザーがリンクをクリックすれば、自社ECサイトに誘導でき、Amazonの本業である小売り事業の収益に直結する。こうした相互作用も、広告単価を抑制できる理由の一つだ。

Amazonの広告ビジネスは急速に成長しており、2024年の第1四半期には118億ドルの売上高を記録した。Prime Videoの広告収入も今後さらに増加すると予測されており、Amazonの広告ビジネスの重要な柱となる見込みだ。

広告と感じさせない広告手法「プロダクト・プレイスメント」

広告単価の低迷を、Netflixとしてどう補うか。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、カギは「プロダクト・プレイスメント」にあると指摘する。

プロダクト・プレイスメントとは、番組や映画の中に特定のブランドや製品を自然に映し込む手法だ。街頭シーンの背景にコカ・コーラのトラックが走っていたり、主人公がBMWでカー・アクションを繰り広げたりしている場合、ブランドが製作側に広告料金を支払い、意図的に登場させていることがある。これがプロダクト・プレイスメントだ。

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視聴者は、広告を見ているという意識を持つことなく、無意識に製品に親しみを覚える効果がある。視聴者が番組内で製品を目にし、その後にその製品のコマーシャルを見ることで、広告の効果が一層高まるとされる。Netflixは、広告主に対してプレミアム価格の広告パッケージを提供している。その一部として、特定の番組内でのプロダクト・プレイスメントが含まれている。

より効果的なマーケティング・ツールとしてプロダクト・プレイスメントを売り込むことで、Netflixは広告単価の減少を補うことができるかもしれない。米メディアのクォーツによると、Netflixと広告契約を締結した企業(プロダクト・プレイスメント以外も含む)には、オンライン旅行予約サイトのエクスペディア、コカ・コーラ、フォード、ロレアル、マクドナルドなどがある。

動画配信の王者・Netflixに表れていた行き詰まりの予兆

米テックメディアのデジタル・トレンズによると、Netflixは2億6960万人の有料会員を擁する「世界最大のストリーミングサービス」となっている。2位Amazon Prime Videoの2億人、3位Disney+の1億5360万人を引き離す。

だが、広告業界の情報を伝えるウェブメディアの「キャンペーン」は、ユーザー数が頭打ちとなり、今後は広告モデルが成長のカギになるとみる。

そんな中、Netflixの強気の広告価格の設定にクライアントは二の足を踏む。コンサル企業・R3のシニアコンサルタントであるジン・イン・ウォン氏は、Netflixの広告価格について、他のCTV(ストリーミングやセットトップボックス)やOTT広告(オーバー・ザ・トップ広告;ネット広告)の在庫販売価格と比べ、2倍から10倍も高いと指摘する。