かつての“インテルショック”を想起させる

4月19日、米国の動画配信大手ネットフリックスの株価が35%下落した。それは、かつてITバブル崩壊のきっかけとなった“インテルショック”を想起させる部分がある。

2014年12月7日、カリフォルニア州ロスガトスにあるNetflix社の本社の外にあるロゴ看板。
写真=Sipa USA/時事通信フォト
2014年12月7日、カリフォルニア州ロスガトスにあるNetflix社の本社の外にあるロゴ看板。

過去、世界の株式市場などでバブルがはじけた時、人々の過度な成長への期待を支えた象徴的な企業の株は大きく下落した。年初来で見ると、昨年11月末まで米国株式市場の上昇を牽引してきたナスダック上場銘柄の下げが大きい。2月上旬のメタ(旧フェイスブック)や今回のネットフリックスの株価下落は、低金利とカネ余りに支えられた強気相場の終焉が近づいていることの兆候に映る部分がある。

最も重要なことは、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が物価上昇への危機感を一段と強めていることだ。4月に入り、FRB関係者からは実現の可否は別にして0.75ポイントの利上げの可能性が指摘された。FRBが追加利上げと流動性吸収をかなりのスピードで進める可能性は高まっている。その結果として、米国の国債市場では金利上昇圧力が一段と高まった。先行きへの過度な楽観に支えられて株価が上昇した“ミーム銘柄”やナスダック上場銘柄への売り圧力は一段と強まるだろう。

先行きを楽観する投資家が急増した

ネットフリックス株の急落は、FRBによる“超低金利政策”と“潤沢な流動性供給”が支えた米国株式市場の強気相場が終焉を迎えつつあることを示唆する。2017年6月末、ネットフリックスの株価は149ドル台だった。その後、株価は緩やかに上昇した。コロナショックの発生によって下落したのち、ネットフリックスの株価上昇のモメンタム(勢い)は強まった。

それを支えたのが、IT先端銘柄に対する投資家の過度な成長期待の高まりだ。コロナショックの発生以降、FRBは事実上のゼロ金利政策を導入した。それに加えて、昨年11月までFRBは月額1200億ドル(約15兆円)の資金を用いて国債や住宅ローンを裏付けとした債券(MBS)を流通市場から買い入れた。

その結果、低金利と流動性が潤沢な環境が続くと、先行きを楽観する投資家が急増した。行動ファイナンスの理論にある“コントロール・イリュージョン”の心理に浸り、自分が阻害要因をコントロールし、多くの利得を手に入れることができると過信する人が増えたといえる。その象徴の一つが、“ロビンフッダー”と呼ばれる米国の個人投資家だ。彼らはSNS上で投資に関する情報を交換しあい、知り合いが買った銘柄を購入し始めた。