少人数制で専門家が読み書きや歌を教える
このプログラムでは、
・子ども6人を先生1人が担当するという少人数制
・午前中に約2.5時間の読み書きや歌などのレッスンを週に5日、2年間受講
・1週間につき1.5時間の家庭訪問
という非常に手厚い就学前教育を提供しました。
さらに、このプログラムでは、貧困家庭が直面する「家庭の資源」の不足を補うため、子どもだけでなく、親に対しても積極的に介入が行われました。
ここで、経済学でよく用いられる「資源」という言葉について述べておきたいと思います。学力など、「アウトプットを生み出すために必要とされるインプット」はすべて「資源」と呼ばれます。
具体的には、親の収入が少なかったり、仕事が忙しくてあまり子どもにかまってやれないというようなことも「家庭の資源」の不足とみなします。
そうした貧困家庭の資源の不足を補うために、ペリー幼稚園プログラムでは、週に1度1.5時間ほどの家庭訪問を行い、先生たちが普段どのように子どもと遊び、話しかけるかを実際にやってみせるなど、親に学びの機会を提供したのです。
教育の効果は大人になってからも続いた
ペリー幼稚園プログラムは、入園資格のある子どもたちのうち、ランダムに選ばれた58人の入園を許可された子ども(=処置群)と、65人の運悪く入園を許可されなかった子ども(=対照群)を比較するという実験によって、その効果の測定が行われました。
この実験は非常に小規模なものでしたが、その結果がのちに極めて高く評価されたのは、対象者に対して、この後約40年にわたる追跡調査が行われたからです。
処置群と対照群の子どもたちの間でどのような差が生まれたのかをみたのが図表2です。
とくに注目すべきなのは、子どもたちが卒業した後――しかも卒業後かなり時間がたった後も――ペリー幼稚園プログラムの効果が持続していたということです。