「書き写す」より「自分の言葉で言い換る」がいい
一方で、自分の言葉でパラフレーズしたり、短く要約したりした生徒のほうが、ただ読んだ学生や書き写した学生よりも高い点数を取りました。
ただし、要約の質には個人差があります。要約するのが上手い人がいる一方で、要約があまり上手くない人もいます。ある研究では、研究に参加した約3分の1以上の大学生は、学習内容についてきちんとした要約ができていませんでした。的確に情報を捉えた質の高い要約をしている学生では、テストの点数がより高かったことが報告されていますが、要約が得意でない人はある程度の訓練が必要です。
また、一夜漬けなど、一度にまとめて勉強しただけでは、長期的な記憶形成に結びつかないことが多くの研究結果で明らかになっています。テストに受かるためだけならいいかもしれませんが、記憶の定着を考えるとこうした間隔をあけずに一度に続けて勉強する「集中学習」では、本質的な学びにはなりません。テスト前に頑張って詰め込んだのに、2週間後にはほとんど忘れてしまっていた、という経験は多くの人にあるのではないでしょうか。
――多くの人が効果的だと信じている勉強法で、実は効果が低いものはありますか。
はい、実は多くの人が良いと思っている勉強法の中に、効果が低いものがあります。特に意外かもしれないのが、「好みの学習スタイルに合わせる」という方法です。
よく「勉強法は人それぞれ。自分の好きな学習スタイルで勉強するのが一番効果的だ」と言われることがありますよね。例えば、視覚情報が好きな人は図やグラフや映像などの視覚的な情報を中心に学習し、耳から聞くのが好きな人は音声教材などの聴覚の情報を中心とした学習を行うというものです。
「自分にあった勉強法」はあてにならない
しかし、こうした学習者の好みの学習スタイルを判別し、学習方法を変えたほうが効率的なのかについては、今のところ科学的根拠はあまりないのです。
著名な認知心理学者たちが学習スタイルの効果についてまとめた論文では、学習者の学習スタイルを判別し、それに合わせた学習をしたほうが良いとする科学的な根拠は現時点では不十分であり、いくつかの研究では、それを裏付けない結果が出ていることが報告されています。
例えば、解剖学のコースを履修する大学生426人を対象とした研究では、自分の学習スタイルと合う勉強法を行った学生の成績は、自分の学習スタイルとは異なる勉強法を行った学生と比べて高くなかったことがわかっています。
むしろ、あまりに「自分にはこの勉強法が合っている」と囚われてしまうと、本当に効果的な勉強ができない可能性があります。