――学習スタイルに合わせない勉強は無駄だと聞いたことがあります。これは本当でしょうか。

その考え方は実は誤解です。「自分は視覚型だから、図や表を使わないと効果がない」とか「自分は聴覚型だから、音声教材でないと学習効率が悪い」といった固定観念は、むしろ学習の可能性を狭めてしまう危険があります。

確かに、自分の好きな学習スタイルで勉強することがモチベーションにつながる面はあります。しかし、それだけに頼ると、他の効果的な学習方法を見逃してしまう可能性があるのです。

科学的に裏付けのある勉強法を継続してみる

例えば、学習者にアンケートと空間認識能力のテストを行って「視覚情報を好む視覚型」か「言語型」に分け、視覚情報を中心とした学習と文字情報を中心とした学習のどちらかをしてもらい、その効果の違いを調べた研究があります。この調査では、それぞれの学習スタイルに合わせた学習を行っても、特に学習効果は上がりませんでした。

重要なのは、自分の好みや固定観念に囚われすぎず、科学的に効果が検証されている学習方法を柔軟に取り入れることです。

アクティブリコール(勉強したことや覚えたいことを、能動的に思い出す勉強法)や分散学習(学習を時間的に分散させて行う方法。いすれも後述)など、本当に効果的な勉強法は、必ずしも自分では効果が実感できないものもあります。試してみた時の感覚では「これはあまり良くないなあ」「あまり覚えられていないなあ」と感じる学習法が、実は長期的にみればより効果が高いということもあるのです。

ですから、「自分には合わない」と決めつけずに、科学的に効果があるとされている学習方法を柔軟に試してみることが大切です。そうすることで、より効果的な学習が可能になり、結果的に学習効率が上がる可能性が高くなります。

安川さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
科学的効果が検証された勉強法を柔軟に取り入れてほしい、と語る。

「非効率な勉強法」が広まった理由

――なぜこのような効果的ではない勉強法が広まっているのでしょうか。

不思議なことに、今の義務教育では、勉強すべき内容は教わりますが、「どうしたら科学的根拠に基づく効果の高い勉強ができるのか」という勉強法そのものは、あまり教えてくれません。そのため、多くの学生が効果的ではない勉強法を知らずに実践してしまっているのだと思います。

また、ハイライトを引いたり、ノートを取ったりすることで、「勉強した気」になってしまうという心理的な要因もあります。これは「流暢性の錯覚」と呼ばれる現象で、実際には内容を記憶し深く理解していないにもかかわらず、自分の知識や習熟度を過大評価してしまうのです。