災害時こそ、政治家の腕の見せどころだが…

しかし13年が経過した今、政治家と地元選挙区との繫がりは希薄になり、政治家自身も無関心になってきました。地震のような自然災害にかぎりませんが、国民の緊急事態にこそ、精力的に地元を回って要望を聞き、政府・役所に伝える──それが政治家の腕の見せどころであるはずなのに、実に嘆かわしい。

余談ですが、岸田さんが夏休みに書店に行き、本を買ったというニュースがありました(2023年8月11日)。岸田さんが購入した書籍は『アマテラスの暗号』(伊勢谷武著)、『街とその不確かな壁』(村上春樹著)、『世界資源エネルギー入門 主要国の基本戦略と未来地図』(平田竹男著)、『地図でスッと頭に入る世界の資源と争奪戦』(村山秀太郎監修)、『まるわかりChatGPT&生成AI』(野村総合研究所編)などです。

これらの本がどうだとは申しません。ただ岸田さんと同じ宏池会でも、昔の政治家は難解な人文書を読み、読書量も教養も豊かでした。非常に勉強していたのです。こうしたところにも、私は政治家の変質を見る思いがします。

「暴力的なオーラを持つ政治家」が消えた

【佐藤】同感です。政治家は変質しましたね。

まず政治家が官僚的になり、逆に官僚が政治家的になりました。私は政治家に暴力性を感じなくなりました。たとえば、鈴木宗男さん(新党大地代表。元北海道開発庁長官)や野中広務さん(元内閣官房長官)、梶山静六さん(元内閣官房長官)には、下手なことを言うと「殴られるのではないか」と思わせる、暴力的なオーラがありました。

その迫力で官僚を威圧していたのですが、今の政治家にはほとんど見当たりません。強いて言うなら、武田良太さん(菅内閣で総務大臣。第四次安倍第二次改造内閣で国家公安委員会委員長)と二階俊博さん(元経済産業大臣。安倍・菅内閣で自民党幹事長)くらいでしょうか。

山口さんが言われるように、選挙戦の荒波に揉まれていないから、政治家から迫力が失われたのかもしれません。