自公の対抗勢力は支持を得られるか

あえて挙げるとすれば、作家の百田尚樹さんがLGBT法(性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律。2023年6月16日成立。同23日公布・施行)に反対して立ち上げた日本保守党ですね(2023年10月設立)。

ここに杉田水脈さんや青山繁晴さんらがLGBT法反対の立場から同調し、自民党を離党して加われば、無視できない力になると思います。LGBT法には、参政党も反対の立場です。

すると、日本保守党と参政党を中心に維新の会、立憲民主党、国民民主党の一部が合流して自公の対抗勢力となり、政権交代を目指すという仮説も成り立ちます。しかし、それこそ「安定か混乱か」で言う「混乱」、というか「大混乱」になるでしょう。そう考えると、やはり有権者は「安定」を選択すると思います。

与党・野党と書かれた木製のブロック
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
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欧米でも右派の新勢力が誕生している

【山口】安倍さんの存命中は、右派的なものをたばねる求心力が自民党にありました。安倍さんは、言わば右派・保守勢力のアイコンだったのです。おかげで自民党の衰弱を隠蔽できました。しかし安倍さんが亡くなり(2022年7月8日)、その求心力が消えたことで、日本保守党や参政党などの新しい右派勢力が、弾けるように誕生したということでしょう。

これは注目すべき変化ですが、世界的な潮流でもあります。

ドイツでは「ドイツのための選択肢(AfD)」、フランスなら「国民連合(RN。旧・国民戦線)」といった右派ポピュリズム・ナショナリズム政党が登場し、どちらも一定の支持を得て、6月の欧州議会選挙で躍進しています。アメリカでもトランプという特異なリーダーが共和党そのものを牛耳る──そんな構図になっています。

安倍さんには、後述する民主党政権(2009~2012年)の失敗を最大の資産にして、その資産を繰り返し利用しながら権力を維持した面があります。国会や党大会など、さまざまな場で「悪夢のような民主党政権」と連呼しました。

また2011年3月の東日本大震災を経て、日本経済がすこしずつ上向くと、円安誘導をして輸出企業を儲けさせ、株価も上昇しました。安倍さんの首相在任中(2012年12月~2020年9月)、日経平均株価は2.33倍にもなっています。経済界には好ましい政権だったと言えるでしょう。