自然災害でも土地所有者の責任が問われる可能性がある

神奈川県の逗子市で2020年、マンション敷地の斜面が崩落して、下を歩いていた高校生が犠牲になりました。

この事故をめぐって、遺族は管理会社が「安全対策を怠った」として、また、区分所有者の住人たちにも「危険な斜面に関する責任がある」などとして、管理会社と区分所有者に対して損害賠償を求めました。

マンションの区分所有者とは、1億円の損害賠償で和解しましたが、2023年に地方裁判所は管理会社側の責任を認め、賠償を命じています。

このように、自然災害による事故でも、土地所有者の責任を問われる可能性があるのです。

近年、台風や集中豪雨の被害が甚大化しています。山林や崖地を所有すること自体にリスクが潜んでいることは、意識したほうがいいでしょう。

「相続税対策のアパート」で泥沼化したケース

野田家の自宅の土地は300坪の広さがありました。母が亡くなると、あとを追うようにその1年後、夫の正平も亡くなりました。

正平は生前、アパート建築会社の営業マンに「相続税対策になる」と言われて敷地内にアパートを建てていました。

長男の源一郎の将来が気になっていることも、正平の背中を押しました。というのも、源一郎は無職だったからです。

源一郎は大学を出て大手機械メーカーに就職しましたが、40歳のときにうつ病を発症し、紆余曲折あって退職。その後、再就職したものの長続きせず、実家に戻ってきてからは、中年引きこもりの状態が続いていたのです。

正平がアパートを建てたのは、そんな源一郎の将来を案じてのことでした。

出典=『あるある! 田舎相続』(発売:講談社、発行:日刊現代)