実家を相続することになった場合、何に気をつければいいのか。あす綜合法務事務所グループ代表の澤井修司さんの書籍『あるある! 田舎相続』(発売:講談社、発行:日刊現代)より、実家の相続で損害賠償を請求された事例をお届けする――。

「相続した実家をセカンドハウスに」で泥沼化したケース

辻岡家では、母のトメが94歳で亡くなりました。長男の真也も長女の和代も都会暮らしです。そこで真也は考えました。

「実家をセカンドハウスにしようかな。裏山で山菜取ったり、シイタケを栽培したりできるし」

この考えを聞いた和代は、「実家を管理してくれるんだったら、任せたいわ」と安心して喜びました。

結局、実家と裏山は真也が、預貯金500万円は和代がそれぞれ相続することで話はまとまりました。

【図表1】辻岡家のケース
出典=『あるある! 田舎相続』(発売:講談社、発行:日刊現代)

裏山で大規模な土砂崩れが発生

真也は、最初のころは月に1回のペースで実家に戻って手入れをしていましたが、そのうち面倒になり、だんだん足が遠のいていきました。

実家も裏山も少しずつ荒れていきましたが、離れた都会に住む真也は気にしませんでした。

ところが数年後、大型台風が襲来。裏山で大規模な土砂崩れが起こってしまったのです。下の道路を歩いていた人が、土砂に埋もれて亡くなりました。

遺族は「安全対策を怠った」として、裏山の所有者である真也に対し、損害賠償を求める訴えを起こしたのです。