アパートの価値が大きすぎて分けられない

長女の友美は結婚して隣町に住んでいました。

正平が亡くなって、友美と源一郎が財産を相続することになりました。正平は遺言を残していませんでした。

アパートの評価額は1億円、自宅は2000万円、預貯金は1000万円。資産総額は1億3000万円で、2人で分けると6500万円ずつです。

ところが、たとえ自宅を売却しても、アパートの価値が大きすぎて均等に分けることができません。

源一郎が1億円のアパートを相続して、自宅と預貯金の計3000万円を友美が相続すると、差額は7000万円。源一郎は友美に7000万円を渡さなければなりませんが、無職の源一郎に貯金はないし、銀行がお金を貸すはずはありません。

「働きもしないで相続」は納得できない

しっかり者の姉である友美は、表向きは冷静さを保っていました。

しかし本音では、「源ちゃんは働きもしないで、散々親に世話になっていて、相続でもたくさん持っていくなんて、納得できない」と思っていたのです。

ソファに横たわりポテトチップスを食べながらテレビのリモコンを操作する人
写真=iStock.com/gesrey
「働きもしないで相続」は納得できない(※写真はイメージです)

結局、アパートを売却して遺産を均等に分けることになりました。

実はこのアパートが利回り10%前後の優良物件で、不動産会社に仲介を依頼すると、あっという間に買い手がつきました。

せっかく正平が源一郎のためを思って建てたアパートでしたが、こうして手放すことになったのです。