心を診る精神療法に興味のある学生は不合格に?

入試面接は、受験生の「医者としての適性(人間性)」を見極めることが大きな目的とされています。前出の教授の言葉を参考にするなら、人の気持ちがわかること、人の話を聞くことができることが、評価の重要なポイントになるのでしょう。

そうしたことを判断するために、入試面接の面接官の中には、精神科の教授が含まれている大学が少なくないようです。

全国の大学の精神科の教授は、繰り返し述べてきたように、薬物療法中心の人たちが大半を占めています。

したがって、入試面接のときに、精神科を目指す学生が「カウンセリングや精神療法を勉強して、心を病んでいる人を1人でも多く救いたいです」などと発言したら、その時点で印象ダウンです。

「そんなことしたって患者は治らないよ」
「動物実験に興味のない人間は、論文を作らないからダメ」

と面接官に思われるかもしれません。それを露骨にいわれなくても、腹の中でそう考えていて、その受験生は点数が足りていても落とすことが可能なのです。

これは本当におかしな話です。

人の気持ちを理解したり、人の話に耳を傾けたりするには、実験動物を相手に薬の研究をするよりも、カウンセリングや精神療法の勉強をしたほうが、絶対に近道なはずです。

和田秀樹『「精神医療」崩壊 メンタルの不調が心療内科・精神科で良くならない理由』(青春出版社)

だけど、とにかく大学では教授のいうことが絶対で、教授が「薬で治す」「カウンセリングなんか時間の無駄」といったら、それに従うしかないのです。別の考えをもった人間は、入試の段階でふるい落とされてしまいかねないのです。

結果、大学病院に入学する精神科医志望の人たちは、薬物療法中心の医者ばかりになり、その中から新しい教授が選ばれて、入試面接でまた薬物に否定的な学生は「悪い子」と判定して振り落とす。そんな悪循環が続いているのです。

われわれカウンセリングを専門とする医者なら、短い時間の面接で人の心がわかると思いません。それができると思っているのが大学の精神科の教授(他の医学部教授もみんなそうですが)だということを知っておいてほしいと思います。

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