わずかな出費で“ものすごく気前のいい人”になれる

「なんせ、高山君の味変調味料は、ほぼ“無償の行為”だ。100円ショップやコンビニで揃う卓上調味料なら、タダでサービスしたってさほど懐は痛まない。お菓子は仕入れにコストがかかるから代金を取らざるを得ないけどね」
「なるほど。わずかな出費で“ものすごく気前のいい人”という印象を与えられそうですね」
「まあね。でもそれだけじゃない」

西久保さんの目が鋭く光った。

「高山君は、固定客を飽きさせない工夫も怠らなかったんだよ。ときには、しっかりコストをかけて珍しいソースやハイエンドな七味、クレイジーソルトやガラムマサラなどを入荷していた。

さらに、自ら味変のレシピを研究し、社内の共有メールで発信した。カップヌードルのシーフードにオリーブオイルを入れるとかね」

そんなことまで⁉ 商店街で自家製の味噌しか売っていなかった店が、世界各地の味噌を扱う専門店となり、最終的に割烹料理屋まで始めたようなものじゃないか。

高山洋平『ビジネス書を捨てよ、街へ出よう』(総合法令出版)

「それを見てまた、高山君のもとへみんなが殺到する」
「まさか、そこまでやるとは……」
「こいつは日々進化している……。どんな分野でも成長を止めないすごいやつに違いないと、僕は彼のことを認めざるを得なくなった」

調味料へのこだわりが仕事へのこだわりと誤認……、いや評価されたのか。

「気づけば、僕もその列に並ぶ一人になっていたよ」

高山君の思うツボさ、と西久保さんは笑った。

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