もうけ優先の民間業者に、ふるさと納税はそぐわない
だが、こうした楽天の振る舞いは、天にツバを吐くものといえる。「地方活性化に貢献したい」とふるさと納税の本旨に賛同するのであれば、ボランティア精神を発揮して、10%を超える高額の手数料をクレジットカード並みの3%程度に押さえてはどうか。
「それではビジネスにならない」というなら、さっさと撤退すればいい。
その結果、自治体の宣伝・広告媒体が大幅に縮小するかもしれないが、返礼品競争は落ち着くに違いない。「楽天ふるさと納税」がなくなっても、仲介サイトはほかにもあり、自治体も利用者も決定的に困りはしないのだ。
ふるさと納税はビジネスではなく、寄付であり、その元手は税金である。もうけ優先の民間業者は、ふるさと納税の舞台にはそぐわない。
総務省にケンカを売った形になった楽天だが、他人事ながら気になるのは損得勘定だ。
署名運動を始めた直後に事務次官に就任した竹内芳明氏は、前任の総務審議官(郵政・通信担当)時代に後発の楽天モバイルにプラチナバンドと呼ばれる使い勝手のいい周波数帯の割り当てを主導したとされる。楽天にとっては、よき理解者ということになる。
ところが、事務次官となれば、当然、ふるさと納税も重要な所管業務となり、楽天とは正面から対峙せざるを得ない。楽天は恩を仇で返すことにならないだろうか。依然として赤字を垂れ流している楽天モバイルに影響が出なければいいのだが…。
次の一手は寄付上限の「定率」を「定額」に
寄付金をかすめとる仲介業者問題と並んで、ふるさと納税の是正策として簡略でかつ早々に実現可能なのが高額納税者ほど有利な節税対策問題だ。本稿では詳しくは言及しないが、「金持ちほど得をする制度」は改めなければならない。高額納税者を優遇する理由はまったくないのだ。
次の一手として、総務省には、ふるさと納税における住民税の控除の上限(寄付金の実質的な上限)を、2割という「定率」ではなく、一律の「定額」に改める決断をしてもらいたい。
「定率」の場合、高額所得者ほど寄付の上限額が飛躍的に高くなり返礼品の総額も大きくなるため実質的な節税につながるが、「定額」ならば納税額の違いによる格段の不公平は生じない。
約1000万人が1兆円超を寄付しているから、単純平均すれば1人当たりの寄付額は10万円程度。これは、年収約700万円世帯の上限額に相当する。この当たりが適当な上限額といっていいだろうか。
いまだ住民税納付義務者の8割、5000万人超がふるさと納税に参加していないだけに、市場は十分に伸びしろがある。
自治体も地場産業も寄付者も「三方一両得」というメリットの多いふるさと納税を維持し寄付文化を育むためには、抜本的に制度を見直さなければならない。
朝日新聞や毎日新聞などの主要紙は、寄付金1兆円突破を機に、社説で「返礼品廃止」を主張し始めた。
「廃止」の議論が本格的に巻き起こる前に、自治体はもとより、利用者も、仲介業者も、頭を冷やして制度の将来を探ることが求められている。