日本人が1万人も住んでいる町へ

ヤマモリのタイ工場はバンコクから南へ150km、車で約2時間の距離にある。わたしが行った7月の下旬、バンコクの最高気温は摂氏29度だった。同じ日、東京の最高気温は35度。タイは東京よりも6度も気温が低かった。日本人にとってタイはもはや酷暑の国ではない。避暑地だ。

工場がある場所はイースタンシーボードという工業団地だった。ヤマモリだけでなく日本企業の工場がいくつもあった。日本から赴任した人たちや家族が暮らしているのはシラチャという町で、1万人もの日本人が暮らしているという。シラチャは工業団地から1時間ほどの距離にあり、日本人学校もある。

さて、タイにあるヤマモリの拠点は3つだ。

最初にできたのがヤマモリトレーディング。バンコクにある販売会社である。1995年に設立され、社長は長縄光和。長縄はバンコクのスーパー、日本料理店、ゴルフ場を知り尽くしている男だ。バンコクにおけるヤマモリの顔だ。ヤマモリトレーディングはタイで生産している日本の醤油、レトルトパウチ食品をタイ国内とASEAN地域に販売している。販売する相手先は食品加工会社、レストラン、スーパーなど。

日本でおなじみ「冷凍唐揚げ」の醤油を販売

ヤマモリトレーディングの主な業務はヤマモリがタイで生産していた醤油を日系の冷凍食品工場に納入することだった。冷凍食品会社が作っていた鶏の唐揚げの調味料として醤油を売っていたのである。ちなみに日本で売っている冷凍の鶏の唐揚げの大半はタイで作られている。

鶏の唐揚げは日本向けの商品だから味付けには日本風味の醤油が要る。現地で作っている中国醤油、タイ醤油は使えないのである。だからといって日本から醤油を輸入すればコストが上昇する。その構造を知ったヤマモリは日本の風味そのままの醤油をタイで生産することにしたのである。目のつけどころがいい。同社の社員数は社長の長縄以下50人だ。

筆者撮影
工場の食堂でシャコの炒め物をごちそうになった。タイは海産物が豊富で、大きなエビやシャコを使った料理が多い

2番目の拠点がサイアムヤマモリ。2004年2月に設立された。ここがタイカレーを作っている。

日本のヤマモリと同じ生産設備、生産技術、そして品質管理を導入し、タイの生のハーブを使ったレトルトパウチのタイカレーの他、つゆ・たれ等の調味料の製造を行っている。加えて、タイに住む日本人のために日本風カレーのレトルト食品も製造している。タイ向け商品は日本では売っていない。従業員は150人で日本人は社長の小川智義と工場長の林知崇ともたかのふたり。

筆者撮影
貿易業務を担うヤマモリトレーディングの長縄光和社長(左)と、レトルトカレーを製造するサイアムヤマモリの小川智義社長