「極右のメッセージを打ち砕いた」パリ市長が豪語

そもそも開会式で言及された「フランス革命」自体、本当に良いことだったかどうか議論がある。

イギリスの思想家エドマンド・バークがその著作『フランス革命の省察』(1790年)で喝破したように、国王夫妻を処刑したフランス革命には多くの問題があった。政治思想の面からも、偏っているとしか言いようがない出来事だった。

現在のパリ市長であるアンヌ・イダルゴは社会党であり、パリ五輪の開会を前に、「パリは極右に対抗する砦として残る」と発言。また開会式後にはルモンド紙のインタビューに「極右のメッセージを打ち砕いた」と答えていた。

実は彼女は、私がフランス政府からレジオンドヌール勲章「コマンドゥール」を受けたとき、受勲式に同席してくれた友人でもある。

セーヌ川を泳いだ選手が体調不良に

アンヌ・イダルゴは水質問題が指摘されていたセーヌ川を泳いでみせたが、残念ながら問題は解決しなかった。

結局トライアスロン競技はセーヌ川で実施されたが、水質が十分に改善されたとは言えず、出場した選手のうち、ベルギー、スイス、ノルウェーの選手らが体調不良になった。

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セーヌ川を泳いだ選手が体調不良に(※写真はイメージです)

大会側は「セーヌ川の水質は基準をクリアしていた」としているが、ただトライアスロンの国際競技連盟の基準は決して厳しいものではなく、大阪の道頓堀川ですらクリアするという。選手の健康を真剣に考慮しているのかと言いたくなるような基準である。

選手村も不評である。エアコンもなく、ベッドの寝心地も悪く、騒音も激しく、食事の質も前回の東京大会に比べて劣るという。

さらには、柔道などの競技で、審判の判定が公正ではないという批判も強まっている。フランスに有利になるような偏りがあるとの指摘もあるという。