知識伝授系の書籍が非常によく売れる理由

池上彰さんはわたしも好感をもっているジャーナリストです。池上さんご自身は、難解な世界情勢を、少しでも多くの方に身近な問題として捉えてもらうため、いかにわかりやすく伝えるかに腐心されています。

和田秀樹『60歳からは勉強するのをやめなさい』(SBクリエイティブ)

「情報をそのまま鵜呑みにして納得してはいけない」というようなことをおっしゃっているのを聞いたことがありますが、おそらく池上さんご自身は、視聴者や読者には「複眼的に世界を捉えてほしい」と願っているのだと、勝手ながら想像します。

しかし、ここが残念なところですが、多くの池上さんファンはその肝心の忠告や願いを受け止めることなく、毎回「そうだったのか」とつぶやくわけです。ちょっともの知りになった気分になる快感があるのかもしれません。

本来は、「ああ、そうだったのか」のその先、思考の段階に結びつけてこそ、池上さんの番組の存在価値があるはずなのに。

日本人を見ていると、どうも「こんなことも知らないのは恥だ」と感じやすい傾向があるように思います。

「これはこういうことですよ」と懇切丁寧に教えてくれる番組が高い視聴率を誇り、「知らないと恥ずかしいですよ」と読者をあおる知識伝授系書籍が非常によく売れる理由もここにあるでしょう。

知識依存型の人には生きづらくなる時代

知識を仕入れたらそれで一丁上がりという国民性、もの知りクイズチャンピオンを礼賛したがる国民性、「この人が言っていることなら間違いなし。そのまま信じていいだろう」と、いとも簡単に信じてしまう国民性――これが現実です。

知識をまったくもたない無知は、思考の材料をもたないという点で問題ですが、「知識をもっていれば、及第点をクリアしたことになる」と呑気に考えているとしたら、それこそとても残念で愚かなことだと思います。

そして何よりもこれからの時代は、思考力の欠如した知識依存型の人には生きづらくなることは必至です。AI時代がさらに進めば、「もの知り自慢の使い方知らず」の価値が暴落するのは、火を見るより明らかだからです。

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