5カ月も「泳がせていた」容疑者を慌てて逮捕

盗撮容疑の枕崎署の巡査部長は5月13日に逮捕されましたが、12月の事件発生から、内定に実に5カ月もかかって容疑者を「泳がせていた」事件なのに、「HUNTER」の運営者の家宅捜索からわずか1カ月間で逮捕になったというのは実に不可解です。「本当は事件をもみ消そうと思っていたのに、告発書がでたため」事実関係を隠蔽いんぺいするために仕方なく「解決」したとしか思えません。

さすがに、この問題を重視したのか、警察庁は特別監察を実施すると宣言しましたが、野川鹿児島県警本部長は、内部告発した本田警視正を内部通報者として保護すべき対象ではないと答え、いまだに国家公務員法違反としています。その上、犯人隠避で刑事告発されていた野川本部長は早々に不起訴と判断されました。

組織の幹部が外部メディアに通報したことを理由に職員を処分して、さらに隠蔽しようとした行為は、兵庫県知事の手法にそっくりです。兵庫県知事に対しては、議会による百条委員会が設置され、市民の中からはリコールといった動きもでています。ところが、警察は基本的に閉鎖的な組織。警察庁は7月21日、申し訳のように、「鹿児島県警枕崎署員による盗撮事件で、捜査状況をきめ細く確認し、指示すべきだった」として、野川明輝本部長を長官訓戒としましたが、なんとかこれでおさめようとする態度がミエミエで、百条委員会についても、現状鹿児島県議会は消極的な態度をとっています。

私は、この問題は重大事だと事件発生時から注視していましたが、大手の新聞や報道機関の反応は鈍感でした。「ただのフリーライターだから、いい加減な取材をしているから、警察に家宅捜索を受けたのだろう」といった安易な考えがあるようにみえます。本来は、この鹿児島県警による隠蔽事件と、ジャーナリストに対する家宅捜索という弾圧に対して、新聞協会も日本民間放送連盟も、大々的に取材しキャンペーンを張るべきなのです。

もちろん国防上の機密など国家公務員が絶対に守秘義務を遵守すべき機密もあるでしょう。その漏洩事件で国益を損なう恐れのある事案であれば、報道機関に対する家宅捜索も完全に否定するものではありません。しかし、この事件は本部長のクビを守るという以外にこんな荒っぽい捜査をやる必要がないことなのです。